琺瑯看板探検隊が行く

ホーローの旅

レポート291 宮城県北部ワンディ探検

2013.8.25
宮城県大衡村~加美町~栗原市~迫町~大崎市


探検レポート291

仙台に来て早4か月。おひざ元の宮城県はおろか、ホーロー探検がほとんどできぬまま、夏が過ぎようとしている。
溜まった洗濯と掃除、自炊の面倒だけで休日を過ごしているのは本来の自分の姿ではないが、血圧コントロールができないこのところの体調変化と、出張続きの忙しさにかまけてしまったことが大きかった。
8月も終わりになって天候が安定してきた仙台は、今日もギラギラした残暑である。
地図を眺めると、加美町や栗原市を中心とした県北エリアは手つかずのまま残っていた。
計画は適当でもいいな、とりあえず行ってみるか…思いついたらすぐ行動だ。
情報もないので、行き当たりばったりのホーロー探検のチャレンジである。
仙台駅からレンタカーで出発。国道4号線バイパスを富谷町から大衡村に向かう。
セオリーではバイパス沿いにホーロー看板がないことは分かっているので、脇道から国道457号線に入った。
目に飛び込んできた最初の一枚目が「谷風わた」。宮城県を中心としたごく狭い範囲に集中的に貼られた看板で、これまでに2枚見つけている。
仙台市にある谷風わた(株)の看板だが、社名は宮城県出身の第三代横綱“谷風”にちなんで付けられたという。
これで気を良くして、加美町に向かう。
酒蔵の町として知られる加美町には大和酒造、中勇酒造、田中酒造がある。

探検レポート291

中でも町の目抜き通りに門を構え、「清酒真鶴」を造る田中酒造はその外観も重厚で素晴らしい。看板がなかったのは残念だが、写真を何枚も撮った。
加美町では小さな集落を探して適当にハンドルを回した。しかし、意に反してほとんど見つけることができないまま、辿った軌跡を地図にマーキングするばかりだった。
午後を回り、JR陸羽本線沿いを岩出山から鳴子温泉郷まで辿ってみたが、ホーロー看板は一枚も見つけることができなかった。
看板残存率が低い宮城県を改めて確認するカタチになってしまったが、まぁ、これも仕方がない。
看板は見つからない、そして、暑い。コンビニで買ったアイスキャンデーを片手に、お寺の境内に転がった。
青い空に雲が流れ、頭上の雑木からは蝉しぐれ。名古屋ではついぞ聞いたこともないミンミンゼミの鳴き声も遠くに交じり、短い夏を演出する。
来てよかったなぁ…とつくづく思う。ゆったりと流れる非日常の時間は、自分にとってかけがえのないものだと改めて感じるひと時だった。
2007年に廃止になったくりはら田園鉄道は、かつて「くりでん」の愛称で親しまれていた。
その中心となる栗駒駅の跡地に立ち、駅から東西に延びる商店街を歩いた。
かつてはにぎやかだった栗駒の町も、シャッターが閉まった商店街には人の姿はなく、ネコ一匹すら横切らない。
鉄道がなくなるとは、こういうことだろうか。電車が消え、人が消え、音が消え、そして町が消えていく。

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「ジューキミシン」の赤い看板を見つけたのは、栗駒駅から北に向かった古い家屋や廃屋が並ぶ一角だった。今日一番のお宝である。
軒下にさりげなく貼られているのは、かつて、この家がミシンで生業を立てていたからだろうか。それとも単なる広告宣伝の名残りか、その真偽は分からない。
栗駒で踵を返して、帰路は登米市から大崎市を経由して仙台に戻った。
旧迫町(現・登米市)のJR東北本線沿いで「ボリショイ菅公学生服」と「まるまん学生服」の看板が貼られた屋敷を発見し、更に、大崎市の県道沿いで金鳥ペア看板を見つけたことが後半の収穫だった。
いきあたりばったりの日帰り探検らしく、ホーロー看板はほとんど見つけることができなかったが、夏の終わりの濃密な空気の中に、清涼な風を感じただけでも◎としておこう。
東北の秋は、すぐそこまで来ている。
(2013.12.7記)
※画像上/大崎市の田園風景。宮城平野を象徴する広大な稲作地帯だ。
※画像中/加美町の「清酒真鶴」を造る田中酒造店。寛政元年(1789年)創業。
※画像下/栗原市の中心の町、旧栗駒駅前の通り。2007年にくりこま田園鉄道が廃止。かつてはにぎやかだった商店街はシャッターが閉まり、閑散としていた。



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Profile

つちのこプロフィール
つちのこ
岐阜県在住。
歩き旅とB級グルメの食べ歩きが好きな定年オヤジです。 晴耕雨読ならぬ“晴読雨読”生活に突入し、のんびりとした日々を送っています。
2020年には、少年のころからの夢だった、北海道から鹿児島まで日本列島を徒歩で縦断。
旅の様子はブログ『つちのこ更新日記』で発信中です。


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