琺瑯看板探検隊が行く

ホーローの旅

レポート292 北三陸じぇじぇじぇ~旅 前編

2013.9.7
岩手県盛岡市~滝沢村~西根町~岩手町~一戸町~浄法寺町~二戸市~軽米町~久慈市


探検レポート292

NHKの朝の連ドラ「あまちゃん」で沸く北三陸。
岩手県東部の久慈市から宮古市に繋がる海岸線のエリアを、ホーロー探検を始めた当初からいつかは訪ねたいと思っていた。
仙台に単身赴任したのは、まさに青天の霹靂。隣県の岩手県はその気になれば日帰りでも探検可能なエリアである。
これをラッキーと言わずに何というのか。願ってもないチャンスが先方から転がり込んできたととらえ、秋の風が吹き始めた北三陸に向かうことにした。
仕事が終わった金曜日の夜、仙台から東北新幹線で盛岡に向かう。「はやぶさ」に乗ればわずか42分の距離である。
駅前の安ホテルに投宿し、小雨がぱらつく中、食事に出た。
このところのマイブームは盛岡の「じゃじゃ麺」。
市内には何軒もあるようだが、盛岡城近くにあるじゃじゃ麺発祥の店は行列が切れない人気店で、以前から一度は行きたいと思っていた。
やっとのことでカウンターに座り、迷わず大盛を頼んだが、愛想の悪い店主のおばちゃんが厨房の中で返事もしない。
後から来て私と同じように大盛りを頼んだ二人連れには、 「食べたことあるの?うちは量が多いよ」…と、やさしく聞いたのに、私には何も無し。
それから猛烈に不安になった。 (全部食べれるのか???残したらどうしよう) 結局、超大盛りのそれをペロッと食べることができた。

探検レポート292

そして、「ちーたんたん」と言って、生卵をかけた皿を差し出した。 おばちゃんは、面倒そうな表情でスープを注いでくれたが、今度はレンゲがない。
「レンゲください」 …と言って、ようやく出てくる始末。
発祥の店かどうかしらないけど、どうにも気分が悪かった。行列ができる人気店になっておごりが出たのだろうか。じゃじゃ麺が申し分なく旨かっただけに、この接客は残念だった。
さて、スタートを待たずにちょっとばかしつまずいてしまったが、“満を持して”の北三陸の旅はこうして始まった。

▼9月7日(曇りのち雨)
このところ出張先でも習慣にしている早朝ウォーキングで汗をかいた後、レンタカーで出発。
今日のコースは盛岡市内から内陸部の一戸、二戸を経由して久慈までの長丁場だ。
青森県在住の同好者・ゐゑをさんからいただいた情報を地図にインプットしてコースを組み上げた、“満を持して”のスケジュールである。
まずは盛岡市内の物件だが、目的の看板に向かう途中で、突然、レンタカーのウインカーが故障。左折と右折の点滅ランプが点かなくなった。
これには真っ青である。三車線もある交通量が多い国道を恐る恐る運転し、レンタカー会社に戻ってクルマを交換するまでの30分は、まったく生きた心地がなかった。
昨夜のじゃじゃ麺屋のおばちゃんの怨念か!? 出だしから先が思いやられる展開となった。
双六でいえば【振出し】に戻っての展開となるが、気を取り直して「カゴメケチャップ」の姿看板や、トタン板の看板が貼られた物件を撮影していく。
カゴメの姿看板はかなりのレアものだ。2005年に岐阜県で初めて見つけて以来3例目だが、何度見ても、壜を模ったリアルなデザインに思わずドキドキする。このまま残って欲しいと願わずにはいられない。
古い街だけに盛岡市内は探せばまだお宝が残っているかもしれないが、先を急ぐ旅なので、市内を離れ一戸町に向かうことにした。
といっても、幹線道路の国道4号線を忠実に走るわけでなく、そこは一人といえども探検隊、滝沢村や西根町の“いかにも匂いそうな”県道沿いの集落を狙っていく。
ほとんど成果はなかったが、行き当たりばったりのホーロー探検は、宝探し要素がある探検の原点というべきもので、結果的はさておき、空振りでも十分楽しめた。

探検レポート292

2005年の探検でも訪ねた岩手町は、看板の消失を確認しただけで新たな発見はなかった。
歯が抜けた櫛のように古い商店や民家が並ぶ目抜き通りで、「ヤマセ味噌醤油」の看板を見つけた時には思わずガッツポーズをしたが、撮り終えてからスマホでホームページにアクセスし分類別リストを確認すると、すっかり忘れていたが、すでに2005年の探検時に同じ場所で撮影していた看板だということが分かった。
これまでに何度も同様な経験をしているが、大げさに言えば、自分が辿ってきた人生の足跡を見るようで、感慨深いものを感じた。
さて、一人探検隊はここから先が未知のエリアである。一戸町に入ると、にわかに活気づいてきた。
中でも「カメヤマローソク」の看板が2枚貼られた廃商店は素晴らしい。マニアにも人気がある看板だけに残っていること自体が奇跡的であるが、手の届かない位置に貼られているからこそ盗難を免れたように思う。
更に、いわて銀河鉄道の一戸駅から古い商店が連なる商店街を進むと、複数の看板が貼られた金物屋や酒屋を見つけた。
酒屋の二階軒下に貼られた「ブルドックソース」は東北地方に比較的残っている看板だが、それでも調味料系の看板は稀なだけに見つけた瞬間は心がときめくから、私の看板フェチは相当なもんだと我ながら苦笑してしまう。
未知のエリアでの看板探しは、時間が経つのも忘れてしまうくらい楽しい。浄法寺町で見つけた商店は突然昭和時代に放り込まれたような見事な景観だった。
店内を覗くとパンやカップ麺、洗剤や日用品が並ぶ、いわゆるよろずやさん。
更にうれしいのは入口の軒下にパンとマッチの看板が貼られていた。
これまでの経験では東北地方の人は猜疑心が強く、看板の撮影をお願いしても断られるケースもあったが、六十年配の温厚そうなご主人は「どうぞ、どうぞ」と快く許可してくれた。

探検レポート292

「ほうれんマッチ特約店の看板」はもちろん初見、帰宅してから調べてみると(株)大和産業のマッチ看板だと分かったが、現在も製造しているかどうかは不明である。
すでに16時を回り、あともうひと踏ん張りだ。
二戸市から金田一温泉を経由して国道395号線を軽米町に向かう。2005年の探検でルートが重複した部分もあるが、未知の看板を発見できればしめたもの。そんな気持ちで脇道に逸れたり、小さな集落を拾ったりして進んだ。
雨がぽつぽつと落ちてくるたどり着いた軽米町で、トタン板の民家に見つけた看板が「しょうゆみそワダカン」。
真赤な地に亀甲模様のデザインを見て思い出した。間違いなく、この場所に立って撮影した8年前に見つけた看板だった。
本日二度目の再訪再撮影に、本日二度目の苦笑。 ゴールの久慈市はもうすぐである。(つづく)
(2014.1.12記)
※画像上/岩手町の町並風景。重厚な建物が軒を連ねる。
※画像中/盛岡駅のじゃじゃ麺専門店「じゃじゃめん小吃店」大盛670円。この店は接客も良いし、味も◎だ。
※画像中/岩手町から望む岩手山(2038㍍)。岩手県最高峰。1997年7月に登ったことがある。どこから見ても秀麗な山だ。
※画像下/一戸町で見つけた風景。田んぼにたたずむおばちゃんは、実は案山子でした。
※宿泊/盛岡ニューシティホテル 素泊まり3500円。盛岡駅から至近。激安ですが静かで快適な宿。周りにはコンビニや飲食店もある。☆☆☆☆★



2013年探検レポートへ

Profile

つちのこプロフィール
つちのこ
岐阜県在住。
歩き旅とB級グルメの食べ歩きが好きな定年オヤジです。 晴耕雨読ならぬ“晴読雨読”生活に突入し、のんびりとした日々を送っています。
2020年には、少年のころからの夢だった、北海道から鹿児島まで日本列島を徒歩で縦断。
旅の様子はブログ『つちのこ更新日記』で発信中です。


琺瑯看板探検隊が行く
SINCE 2005.3.17