琺瑯看板探検隊が行く

ホーローの旅

レポート308 海底トンネルで函館へ、初雪舞う青森の旅

2014.11.3-4
青森県藤崎町~黒石市~平川市~大鰐町~弘前市~北海道函館市


探検レポート308

これ以上ないほど重く垂れこめた雲が横たわる、津軽平野を走る。
今日の悪天を暗示している空模様だ。 新青森駅をレンタカーで出て1時間、古い商店や家屋が軒を並べる浪岡の町を走り抜け、ひたすらハンドルを握ると、ようやく黒石に着いた。
ホーロー探検では二回目だが、実は出張がらみで何度か訪ねている。
最も、黒石名物の「つゆやきそば」が食べたくて立ち寄っているので、目的は自慢できるものじゃない。
それでも黒石に来たからには「つゆやきそば」である。中でも発祥の店『妙高』の「つゆやきそば」は外せない。
人によっては「好き」と「嫌い」が大きく分かれそうだが、私は大好きだ。思い出した時に食べたくなる味だと思う。

探検レポート308

さて、腹ごしらえを終えて、いよいよホーロー探検の始まりである。 黒石は伝統的建造物が残る町。
中町通りの「こみせ」は、江戸時代から残るアーケード状の通路で、ひんやりとした石畳に転がってシャッターを切ると、いにしえの時代にタイムスリップしたような気分になった。
酒蔵や木造の火の見櫓がそびえる、碁盤の目に仕切られた町を行ったり来たり。
見つけたのは「日の出麦」の看板1枚のみだったが、前回2008年に訪ねた時に見つけた肥料看板が消失していたり、昨年の出張時にクルマの車窓から確認していた菅公学生服の看板もいつの間にか無くなっていた。 改めてホーロー看板のはかなさを思う。
黒石を離れ、温湯温泉に向かう。温湯と書いて、「ぬるゆ」と読みむ。
温湯は共同浴場「鶴の湯」を中心に、「温泉客舎」という昔ながらの湯治場が軒を連ねており、いずれも明治後期から大正にかけての木造建築で、鄙びた温泉場の雰囲気が濃厚。
つげ義春の漫画の世界そのまま、といったら分かりやすいだろうか。

探検レポート308

また、温湯は「温湯こけし」の発祥地ということで、建物の脇には雨に濡れたこけしの灯篭が下がっていた。
温泉場の入口にある商店で「ハウスカレー」の看板を発見。
凍える手でカメラを構え、夢中でシャッターを押すと、いつしか、晩秋の冷たい雨がみぞれに変わっていた。
情報を得ていた、大鰐駅近くにあるという「ビージ」の看板を見つけることができず、大鰐温泉からJR奥羽本線に沿って碇ヶ関に向かう。
真っ赤に色づいたツタがからみつく土蔵の壁を横目で見ながら、山間の小さな集落にあるよろず屋を探す。
青森在住の同好者、ゐゑをさんに教えていただいた物件である。
巨大な木造家屋は1階がよろず屋になっており、堂々とした構えである。ここには「北光ランプ」の看板が貼られていた。
店内も気になるところだが、静かな集落で、見慣れないおっさんがにゅうと入ってきて、いきなり「看板ありますか?」と言われたらびっくりするだろうなぁ…なんて思うと、躊躇してしまう。

探検レポート308

そんなことを連想することの裏返しか、このところずい分と消極的になってしまっている。
探検を始めた頃は、それこそ"土足"でどんどん入っていって、倉庫の中まで見せてもらうくらいの積極性があったが、今の自分にはそんな意欲や強引さもなくなっている。
最初から諦めてしまって、探検=パイオニア精神もどこいく風である。
そろそろ「探検隊」の旗を下す時が来たのかもしれない。
岩手県との県境にある碇ヶ関を離れ、弘前市へ向かう。 昼の3時だというのに、弘前の町はすでに薄暗く、今にも雪が降りそう…と思っていたら、今年初めての雪が落ちてきた。
中央弘前駅から飲み屋街へふらふら歩くと、提灯が下がった素敵な路地が続いている。
明かりが灯ったら、ゆっくりと飲み歩きたい誘惑をぐっと我慢して、りんご畑に続く道を青森に向かう。
つるべ落としどころか、あっという間に炭を塗りたくったように真っ暗になった晩秋の夕暮れである。
振り返ってみれば、雨、晴れ、曇り、突風、土砂降り、みぞれ、雪…と、分刻みにめまぐるしく変わる荒れた天気の中、津軽平野を走った一日だった。

探検レポート308

翌日、青森駅から特急「スーパー白鳥」に乗り、海底を走る青函トンネルを越えた。
函館までの乗車時間は約2時間。 トンネル内の通過時間は実質30分くらいだろうか。 30数年前の学生の頃、青函連絡船に乗って、ようやくたどり着いた旅を思い出すと、隔世の感である。
来年には新幹線が通るので更に近くなるようだ。
北海道に上陸して函館が近づくと、海岸線の彼方に浮かぶ函館山が…。
函館駅のホームで、「ようこそ函館へ」の看板を見つけた時、改めて、北海道にやってきた気分になった。
(2015.4.26記)
※画像上/黒石市温湯温泉の温泉客舎にかかるこけし灯ろう。建物もレトロでレトロ感たっぷり。
※画像中/黒石名物つゆやきそば。発祥の店『妙高』。独特な味。
※画像中/黒石市の中町通りのこみせ。石畳に転がるとひんやりした感触が心地よい。
※※画像中/真っ赤に色づいたツタが晩秋を彩る。
※画像下/函館の倉庫街を歩く。



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Profile

つちのこプロフィール
つちのこ
岐阜県在住。
歩き旅とB級グルメの食べ歩きが好きな定年オヤジです。 晴耕雨読ならぬ“晴読雨読”生活に突入し、のんびりとした日々を送っています。
2020年には、少年のころからの夢だった、北海道から鹿児島まで日本列島を徒歩で縦断。
旅の様子はブログ『つちのこ更新日記』で発信中です。


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