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ホーローの旅

レポート311 震災とマンガの町、石巻を歩く

2015.1.10
宮城県石巻市


探検レポート311

3連休の初日、朝から雪がちらつくなかを石巻に向かう。
震災の影響でJR仙石線がまだ全線開通しておらず、石巻までのアプローチには高速バスを使用。所要時間は仙台駅前から1時間20分だった。
石巻駅前でレンタサイクルを借りるが、これがモロにママチャリ。変速機もついていない。おとつっあんには辛い仕打ちだ。
石巻駅から商店街に続く漫画ロードには、名作「サイボーグ009」や「仮面ライダー」のフィギュアがそこかしこにあった。
というのも、石巻の北にある登米市は巨匠・石ノ森章太郎の故郷として有名で、仙石線の電車にもキャラクターがデザインされているくらいなのだ。
自転車をのんびり漕ぎながら昔懐かしいキャラクターにカメラを向けていく。009のキャラクターはすべて撮影したと思っていたが、自宅に戻ってから数えてみると、2体撮り忘れていた。
商店街にはシャッターが下り、商店の塀には津波の高さを示す目印があった。3年が経過したいというのに、壁が崩れ落ち、鉄骨がむき出しの建物もそこかしこにあって、震災がまだ終わっていないことを実感した。
予想はしていたが、ショッキングな風景を目の当たりにすると言葉が出ない。
市内中心部が津波に襲われ、甚大な被害を受けた石巻だが、そんな中でも酒蔵や頑健な石造りの建物は残っていた。

探検レポート311

「清酒日高見」を造る文久元年(1861)創業の平孝酒造は津波を免れたのか、年季が入った重厚な蔵や建物もそのまま残っていた。
うれしいことに、今は普通酒の代表銘柄となっている「清酒新関」のホーロー看板も貼られていた。 また、1階部分が津波を受けた、中央一丁目にある「観慶丸商店」は、昭和5年に完成した木造タイル張り3階建のレトロ感たっぷりの建物。
元々は文政元年(1804)に創業した陶器を卸す廻船問屋で、この建物が完成すると、石巻初の百貨店となったようだ。石巻で最初にカレーライスを出した店としても有名である。
「観慶丸商店」は今は営業をしていないが、市が文化財として管理していくということである。
更に、道路を挟んだ向かいに旧東北実業銀行石巻支店があり、現在は貸しビルになっているが、こちらもインパクトがある建物である。
さて、ホーロー探検がマンガのキャラクターや古い建物を探すことにすり替わってしまったが、そこは"腐っても探検隊"である。
北上川の堤防に近い住宅地で、金鳥と地酒の看板を発見。「清酒福の魂」と読むのか、帰宅してから調べてみても蔵の所在は分からなかった。
午後2時を回り、古い民家が残る石巻市北境という小さな集落にハンドルを向けた。 北上川の堤防から見えるのは仮設住宅がずらりと並ぶ風景。
石巻を襲った津波はどこまで川を逆流したんだろう…そんなことを考えながら、北上川を越えた。

探検レポート311

それにしても北風がめちゃくちゃ強い。おとつっあんには無慈悲な、変速機のない自転車である。
ハンドルをとられてペダルをこぐ足に力が入らないし、更に強くなった風に飛ばされそうになりながら、ヘロヘロになってようやく到着した。
しかし、これほど苦労してたどり着いたにも関わらず、雪がチラつく中を長屋門を構えた民家が軒を並べる道を歩いてみたが、期待のホーロー看板の姿はなかった。
結局、この日久しぶりに持参したデジイチのEOSで気に入った風景を何枚か撮影して、集落を後にした。
石巻駅までの帰路は、あまりにも寒くて、冷え切った体を途中で見つけたタイ焼き屋さんで温めながら帰還した。
すっかり暗くなった駅前で、石巻のB級グルメとして昔から食べられている、「石巻焼きそば」ののぼりを発見。
疲れた体に、ウスターソースの香ばしさと歯ごたえが、なかなかだった。
(2015.6.14記)
※画像上/JR石巻駅前にある石ノ森章太郎『009シリーズ』のフィギュア(フランソワーズ)。
※画像中/石巻市中央一丁目の町並み。手前の建物は昭和5年完成の観慶丸商店。向こうは旧東北実業銀行石巻支店。どちらも現在は営業していない。
※画像下/石巻のB級グルメとして昔から食べられている石巻焼きそば。『たこ焼きくるるん』大盛620円



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Profile

つちのこプロフィール
つちのこ
岐阜県在住。
歩き旅とB級グルメの食べ歩きが好きな定年オヤジです。 晴耕雨読ならぬ“晴読雨読”生活に突入し、のんびりとした日々を送っています。
2020年には、少年のころからの夢だった、北海道から鹿児島まで日本列島を徒歩で縦断。
旅の様子はブログ『つちのこ更新日記』で発信中です。


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