琺瑯看板探検隊が行く

ホーローの旅

レポート316 ♪襟裳の春は何もない春ですぅ~前編

2015.5.4
北海道苫小牧市~厚真町~穂別町~日高町~浦河町


探検レポート316

桜前線が北上し、北海道に遅い春がやってきた。
新ひだか町静内を走る二十間道路は今が盛りの桜のトンネル。ついひと月前に仙台で酔いしれた桜を、またこうして見ることができるとは思ってもみなかった。日本に生まれてよかったとつくづく思う。
今回のホーロー旅は、北海道探検の総仕上げともいうべき位置づけである。
これまでの11回に亘る探検で、利尻、礼文、奥尻といつた離島を除いた道内各地に足跡を残してきたが、自分にとって空白地帯である襟裳岬を巡るエリアの探検に、いよいよチャレンジするわけである。
新千歳空港を出て、苫小牧、静内、浦河、様似、襟裳岬、広尾を回って帯広へ。様似~広尾までの区間は未踏のルートだ。
わずか3日間の旅であるが、未知へのチャレンジに心の躍動を覚えずにはいられない。
さて、今回のホーロー旅、最初のターゲットは苫小牧の町名看板で始まった。

探検レポート316

道内の町名看板は、札幌、旭川、帯広で昭和30年代に設置された看板が見つかっている。釧路にも貼られたことが分かっているが、すでに残っていない現状がある。
そんな中で苫小牧での発見情報が飛び込んできた。 スポンサーは『ネージュ石鹸』という洗剤石鹸メーカー。
調べてみると、札幌市に本社を置き、穂別町で創業した北光油脂というメーカーだということが分かった。
ちなみに創業は昭和21年(1946年)、1986年に倒産。 こうした日用品のローカルメーカーがスポンサーになっている町名看板は貴重である。
しかも珍しい石鹸ブランドということで、ぜひ撮影したい看板であった。
看板に記された町名をヒントに目的地に向かうが、該当の番地を見つけても看板は見つからない。何度も同じところを回っているうちにようやく発見。
何のことはない、最初にナビを設定したどりついた民家の壁にあった。 更にうれしいことに、そこから至近距離の民家でもう一枚発見。スポンサーも同じだ。
この辺りに集中的に貼られたのだろうか。事前にグーグルストリートビューで調べておけばよかったと後悔しながら、3匹目のドジョウを狙って走り回るが、次はなかった。
苫小牧市内で有名なカレーラーメン店『味の大王』で昼食を取り、国道235線を鵡川に向かう。

探検レポート316

殺風景な原野がどこまでも続くが、狙いのホーロー看板はまったく見当たらない。
日高町に入り、富川から国道237号線を北上し、穂別方面に向かうことにした。
オヤコわたやお茶の看板が貼られた屋敷を発見。北海道の定番看板ばかりで面白味もないが、本日唯一の収穫になりそうな予感もあり、四方の角度から念入りに撮影をした。
期待の穂別町は撃沈であったが、すでに廃線になった富内線の旧富内駅に立ち寄れたことは収穫だった。
というのも、富内駅は高倉健主演の映画『鉄道員』のロケ地になったことでも有名で、当時のまま保存されている駅舎の構内には映画の撮影の様子を写したパネルや小道具が展示されていた。
更に『とみうち』という駅名看板もそのまま駅ホームに貼られており、国鉄当時の雰囲気も濃厚で、観光スポットとしては地味ながらも、訪ねてよかったとしみじみ思える場所だった。
富内駅がある穂別から再び往路を戻り、太平洋を観ながらJR日高本線に沿って南下する。
小さな集落で新聞や金鳥ペアの看板を見つけるも、そこから先はまったくの不発だった。
新ひだか町の静内駅からは冒頭に書いた桜の名所へ寄り道。競走馬が草を食む牧場も間近に見える。

探検レポート316

看板探しも脱線してしまったが、今の時期しか見ることができない風景の素晴らしさを味わうことも、旅の楽しみと思って、ハンドルを握った。
夕暮れが近づくと雨と風が強くなってきた。天気予報は当たっている。これから夜にかけて雨が激しくなるようだ。
予約した宿がある浦河まで、ひたすらアクセルを踏んでいく。
そんな中でも集落を見つけては脇道に逸れていくが、看板の姿を確認することもなく、どっぷりと暗くなった頃、ホテルに到着。
ようやく見つけたコンビニで、晩飯の弁当と缶ビールを買って、短いような長かった一日が終わった。(つづく)
(2015.10.3記)
※画像上/国鉄旧富内線の富内駅。1986年に廃駅となった。この駅が有名なのは高倉健主演『鉄道員』のロケ地になったこと。
※画像中/桜前線北上中。桜の名所、静内に限ることはなく、桜はどこでも満開だつた。穂別町で。
※画像中/『味の大王苫小牧店』元祖カレーラーメン790円 ボリューム感たっぷりでカレーの香りが食欲をそそる。
※画像下/日高町は競走馬の故郷。サラブレッドがのんびりと草を食む風景がどこまでも広がる。
※宿泊/ホテルイースト 素泊まり5400円。浦河町市街地ホテル。周りには飲食店もなく、コンビニまでも遠い。このクラスなら4000円台が妥当だが、競合が少ない浦河では割高でも我慢するしかない。☆☆★★★



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Profile

つちのこプロフィール
つちのこ
岐阜県在住。
歩き旅とB級グルメの食べ歩きが好きな定年オヤジです。 晴耕雨読ならぬ“晴読雨読”生活に突入し、のんびりとした日々を送っています。
2020年には、少年のころからの夢だった、北海道から鹿児島まで日本列島を徒歩で縦断。
旅の様子はブログ『つちのこ更新日記』で発信中です。


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