琺瑯看板探検隊が行く

ホーローの旅

レポート329 岩手へ、ストリートビューで見つけた看板探し

2015.9.5
宮城県登米市~気仙沼市~岩手県一関市~陸前高田市~住田町~遠野市~花巻市~北上市~奥州市


探検レポート329

このところのホーロー探検の武器として活用しているのが、グーグルストリービュー。
東北地方の田舎の道といえども、ビューで検索すれば、農家の蔵や商店に貼られたお宝の姿をキャッチできる優れものだ。
宮城県北部から県境を越えて、岩手県南部を中心に回る日帰り探検を計画したのは、ビューで探した情報が膨らんだ初秋の週末。数か月かけての机上探検で見つけ出した成果はいかに…。
いつものように仙台駅前でレンタカーを調達して出発。登米市から気仙沼市に向かう。
国道346号線を北上川の支流、二股川に沿って走ると、旧東和町米川(現・登米市)の集落に着いた。
仙台から2時間の距離といったころだが、小規模ながら静かな佇まいをみせる古い町並みが印象的である。
なまこ壁の大きな蔵をもつ商家の軒下にお茶の看板を発見。本日一枚目の収穫である。
『井ヶ田のお茶』というブランドたが、看板に描かれた商標は"井"と"田"を見事にデフォルメしている。

探検レポート329

レトロな字体もさることながら、ホーロー看板に描かれる登録商標のデザインには味があるものも多くあり、これを見るだけも楽しい。
米川の集落から旧藤沢町を経由して気仙沼市に到着。ストリートビューで見つけた看板は、そこにあるのが当たり前のように民家の壁に貼られていた。
『選挙法守らぬ候補はボイコット』というブラックジョークのようなコピー。
ビューの画像ではてっきり町名看板かと思っていたが、何と選挙管理委委員会の看板だった。
こうした標語のホーロー看板は数多くあるが、ユニークさでこれは群を抜いている。 さて、ここからがいよいよ"ストリートビュー探検"の本番である。
まずは岩手県一関市の山間部で見つけた看板商店だ。それもほぼ同じエリアに二軒というおまけつき。
ビューを検索してこの商店を見つけた時には心が躍った。これまでにも実際にその場を訪ねてみるとすでに消失していたというパターンに遭遇しているので、ビューの画像そのままが目に飛び込んできたときは本当に嬉しかった。
一軒目の商店はすでに無人になっており、壁面に3枚と、軒下に5枚の吊看板が揺れていた。

探検レポート329

何とも雰囲気がある商店である。周りには民家もほとんどなく、森の中から突然現れたオモチャ箱のようだ。
『庄慶ポマード/庄慶香油』を筆頭に、初見の看板が4枚。よくぞ残っていたなぁ…という感想しきりだが、岩手県を代表する看板商店には違いない。
そしてもう一軒も、これまた素晴らしい商店。この店は営業中だったので、店の奥にいた店主のおばあちゃんに声をかける。
「看板を撮りたい」というと、何のことか分からなかったようで、店と隣接している住居側の入口にあった『アデカ石鹸』と『庄慶香油』を指して、「この古い看板を撮らせてください」と言って、初めて納得してもらった。
おばあちゃんの話だと、店は100年近く営業しているようで、看板はいつ頃からあるのか分からないという。
『コカ・コーラ』のボタン看板は比較的新しそうだが、すでに製造されていない『鶴之卵石鹸』は相当に古い。
『塩小賣所』の看板にある小さなロゴも"岩手縣"と旧字体になっており、恐らく昭和30年代以前ではないだろうか。

探検レポート329

新旧入り混じった看板は全部で7枚。本日2番目の"岩手県を代表する看板商店"だった。
一関市を離れ、次に向かったのが陸前高田。2006年以来の訪問だが、沿岸部は2011年の東日本大震災の津波で壊滅的な被害を受けているのは周知のとおり。
今回は被災していない山間部の集落を狙ってお宝を探すことにする。 クルマ一台がやっと通れるような林道沿いにある集落でクスリとミシンの看板を発見。
更に山の中に一軒だけぽつんとあった民家で『ジューキミシン』の看板。ストリートビューでは見つけることができなかっただけに、こうした偶然の発見はホーロー探検の原点に返ったようで素直にうれしい。
午後を回り、住田町から遠野市に向かう。JR釜石線に沿った道路沿いで見つけたのが『太陽櫻学生服』。
線路から50メートルほど離れているが、ストリートビューでしっかり確認できていたので、この物件は確実にゲットできた。
また、遠野市の市街地から北東にある酒蔵・上閉伊酒造には『清酒国華』の黄色い看板。これもビューで確認した物件。
何だかスタンプラリーをしているようで味気なくもないが、机上のビューで探す楽しみと、実際にそれがゲットできたことによる充実感がミックスして満更でもない。
むしろ、ストリートビューを積極的に活用することで看板探しの時間的効率を図り、その分を活動エリアの拡大に転用できる。
休日や時間が十分に確保できないしがないサラリーマンの自分にとっては、これからも一層強い味方になるだろうと思う。

探検レポート329

さて、この日の探検も後半戦。これまで何度も訪ねている花巻市と北上市が最後のフィールドである。
まずは『蛇の目ミシン』と『マルト完全飼料』が貼られた民家に向かう。 看板屋敷の風格たっぷりのこの民家は、バス路線でも何でもない集落の外れにあった。
地図上では食指が伸びない場所であるが、ストリートビューだからこそ発見できた物件だと思う。
更にこの民家から比較的近い場所には3枚の看板が貼られた廃商店があった。
ビューでは『オロナイン軟膏』しか確認できなかったが、『関東ソース』と初見の『カルテックス石油製品』もあり、うれしい誤算だった。
そして最後を飾るのが、地酒を中心に6枚が貼られた廃商店。木造の堂々とした店構えも看板商店としての雰囲気十分で、許すことならそのまま重要文化財にでもして、後世に残したい物件である。
本日三軒目の岩手県を代表する商店との遭遇に、嬉しさを隠しきれない。
店を隔てて交番があったが、そんなこと気にもせず、シャッターを押しまくった。 きっと、お巡りさんは"変なオヤジ"が不審な行動をしているとでも思いながら横目で見ていたに違いないだろう。
しかし、滅多にない興奮である。これを抑えることはできず、ひたすら店の前をウロウロする自分だった(笑)。
今回の探検はストリートビューを武器に久しぶりの大量収穫となったが、看板探しばかりに固執していたわけではない。
風景に目を転じると、刈入れを待つばかりの黄金色の田園風景が目に鮮やかだったし、一面に咲き誇る白い蕎麦畑も東北らしい景色だった。
ひっそりとたたずむ町並みには人の姿を見かけることもなく、町を貫く県道をカメラを提げてゆっくりと横切っても、クルマが通ることもなかった。
猫でさえ横切らない街角。
微かな風の音が心地よく、ストリートビューでは決して体感することができない、静かな風景に癒されたことを最後に付け加えておこう。
(2016.3.6記)
※画像上/岩手県住田町で見つけた酒蔵。なまこ壁の蔵が美しい。以前は活気があったのだろうか、人の姿も見ることなく、酒蔵はすでに廃業しているようだった。
※画像中/かつての商家だった黒塗りの重厚な蔵。宮城県登米市東和町米川。
※画像中/北上市で見つけた廃屋。ツタが生い茂り、今は訪れることもない。
※画像中/収穫を待つばかりの黄金色の稲がなびく、花巻の風景。
※画像下/遠野市郊外の風景。刈入れを待つばかりの田園風景に心が和む。



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Profile

つちのこプロフィール
つちのこ
岐阜県在住。
歩き旅とB級グルメの食べ歩きが好きな定年オヤジです。 晴耕雨読ならぬ“晴読雨読”生活に突入し、のんびりとした日々を送っています。
2020年には、少年のころからの夢だった、北海道から鹿児島まで日本列島を徒歩で縦断。
旅の様子はブログ『つちのこ更新日記』で発信中です。


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