琺瑯看板探検隊が行く

ホーローの旅

レポート332 杜の都に町名看板を追う

2015.10.3-10
宮城県仙台市


探検レポート332

仙台での単身赴任生活も3年目。時々はオヤジ料理を楽しむくらいすっかり一人暮らしにも慣れた。
着任早々に市内を自転車で走ってホーロー探検をしてみたが、都市開発によってかつての古い町並みが失われた市内ではほとんど見つけることができなかった。
町名看板についても他サイトに掲載されているものはすでに消失しており、代わりにその近くで新規看板を1枚見つけただけに終わってしまった。
それ以来2年近く、仙台市内で看板探しをすることもなく過ぎたが、古本屋で見つけた一冊の本で、再び仙台の看板に関心を向けることになった。
2003年に発行された仙台の町歩きガイド『仙台とっておき散歩道』(西大目祥子著)を開くと、仙台の東の玄関口、名掛町の民家の写真があり、そこにばっちりと短冊形の町名看板が写っていた。
この情報を得てから駅周辺を中心に何度も足を運んでみたが、期待に反して一枚の看板も見つけることができなかった。
かつては仙台市内に多くの町名看板が貼られていたと考えられるが、駅周辺は区画整理と開発によって看板は消滅してしまったのだろうか。
しかし、仙台から東にある青葉区の大崎八幡宮を中心としたエリアでは新規の看板を見つけているので、まだまだ可能性がありそうだ。
ストリートビューで確認してみると、『八幡』を中心に3枚の町名看板を発見。読みは当たったのである。

探検レポート332

▼10月3日
仙台駅からJR東北本線に乗り、北山駅で下車。ビューで見つけた『三条町13』が一枚目のターゲットである。
北山から三条にかけては寺院が多く、霊園の脇を回り込んで歩く。 『三条町13』は民家の玄関前のフェンスに貼られていた。
看板は東京23区や関東地方に多い横型のスポンサー付きタイプだ。東北でこのタイプが存在しているのは、看板が製作された時期や貼られた時期、更に関東との関係を推察するうえで貴重な発見だと思う。
三条町から地図を確認しながら大崎八幡宮を目指す。もちろん町名看板を見つけるために古い民家がありそうな通りを探しては道草をしていく。
30分ほどで大崎八幡宮に到着。その敷地に立つと実に堂々とした立派な社殿(国宝)に圧倒された。
大崎八幡宮は2月の『どんと祭り』での裸参りの神事が有名で、仙台にあっては一番歴史がある神社である。
まずはホーロー探検の成果を祈願する。ついでに家内安全と健康も祈る。
本日2枚目は神社からほど近い『八幡4丁目』の看板。ビューで見つけたものだが、実際にその場に立ってみると、よくぞ残っていたなぁ…というロケーションだった。
次に、大崎八幡宮の境内を回り込むように国見町に向かう。
『国見5丁目』は坂の途中に建つ民家にあった。JR北山駅からすでに2万歩を歩いているので、普段からすると結構な運動量である。
汗を拭きつつ3枚目をカメラに収め、そのままJR国見駅にゴールした。
帰宅後、八幡周辺が気になって仕方がないので、ビューでくまなく机上探検を行った。その結果、『八幡6丁目』で1枚発見。これは再チャレンジするしかあるまい。

探検レポート332

▼10月4日
仙台駅前からバスに乗り、八幡6丁目で下車。目指す町名看板は広瀬川の河川敷に近い民家に貼られている。
高台にある国道を歩きながら眼下に広がる河川敷を見ると、大勢の人々が今は盛りの『芋煮会』を楽しんでいるのが見えた。
『八幡6丁目』を無事ゲットして国道を戻り、バスがやってくるまでの間、バス停の前にあった廃業した商店でペットボトルの水を飲みながらしばしまどろむ。
何の気なしに商店の側面に回ると、うれしいことに町名看板があった。
『八幡6丁目2』の看板はたばこや塩の看板に挟まれるように貼られていた。偶然見つけた看板だけにうれしさもひとしおだった。

▼10月10日
仙台市内で5枚の町名看板を見つけたことに自信をもって、ストリートビューで机上探検をする日々が続いた。
そして見つけたのが若林区の『土樋』の看板である。これは短冊形で東海地方によくあるタイプである。
逸る気持ちを抑え、自宅から30分を歩いて現地に向かったが、看板があるべき場所が、なんと家を取り壊して基礎工事の真っ最中ではないか。
せめてあと一週間早く訪ねていれば、カメラに収めることができたと思うと残念でならなかった。
こうした経験は過去に何度もあるが、しばらくは立ち直れそうにないくらいショックだった。
その後は広瀬川を越えて長町周辺まで当てもなく歩き回ったが、町名看板を見つけることはできなかった。
仙台の町を歩いた数日で、町名看板が縦型、短冊形ともかつては広範囲に貼られていたことを実証できたことは大きな成果となった。
これに終わることなく、今後も探検を継続したいと思っている。
この町にいる間に更に見つけることができれば、仙台での暮らしも満更じゃないと思えてくるに違いない。
(2016.3.21記)
※画像上/仙台市青葉区の大崎八幡宮。社殿は国宝に指定されている。
※画像中/大崎八幡宮の境内に奉納されている酒樽。
※画像下/広瀬川の近くで見つけた廃商店。町名看板が貼られていた。



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Profile

つちのこプロフィール
つちのこ
岐阜県在住。
歩き旅とB級グルメの食べ歩きが好きな定年オヤジです。 晴耕雨読ならぬ“晴読雨読”生活に突入し、のんびりとした日々を送っています。
2020年には、少年のころからの夢だった、北海道から鹿児島まで日本列島を徒歩で縦断。
旅の様子はブログ『つちのこ更新日記』で発信中です。


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