ホーローの旅
レポート345 信州真田の里でお宝さがし
2016.5.14
長野県上田市~須坂市~長野市~小布施町~上田市
ホーロー看板を追いかける群馬県在住の同志、TMさんから興味深い情報をいただいた。
それ以来心は長野県にあった。 それから1か月後。天気を気にしながら機会を探り、新幹線を乗り継いだ日帰り探検をようやく実行に移すことになった。
今回の目的は、情報を貰った小布施町にある看板商店の訪問と、上田市に残る町名看板の撮影である。
仙台から上田までの距離は、東北新幹線と上越新幹線を乗り継げば、わずか2時間20分。費用はかかるが日帰りも十分可能なのだ。
今回は上田駅前でレンタカーを調達し、須坂、長野、小布施をぐるりと回る旅である。 大宮で上越新幹線「はくたか」に乗り換え、上田駅で下車。NHK大河ドラマ『真田丸』で脚光を浴びているだけあって、駅前ロータリーには六文銭ののぼりがずらりと並んでいた。
上田城までは歩いて行ける距離なので、観光客の姿も目についた。 上田の探検は今回で四度目になるが、過去の探検では町名看板を積極的に探すという意志はなかった。
ここ数年の活動で、京都の仁丹看板に始まり、東京の町名看板にこだわって撮影するうちに、上田の町名看板が気になりだしたわけだ。
一方通行が多い市内をクルマで回りながら町名看板を撮影していくが、見つけた看板は合計6枚。そのうちの1枚はガスメーターの後ろに隠れていた。
グーグルストリートビューによる事前調査では上田駅からほど近い住宅地で1枚見つけていたが、現場を訪ねてみると建物がリフォームされた後で、残念ながら看板の姿はなかった。
こうしたことは過去に何度も経験しているが、やはり自分の行動が遅かったことが悔やまれる。 その都度嘆くのも情けないが、悔いが残るのはどうしたものか。だったらストリートビューを見なければ良いわけだが、パンドラの箱を開けてしまったからにはもう遅い。
改めて思うが、"看板の命短し"行動を起こすのは今しかないのだ。 くよくよしていても仕方がない。気持ちを切り替えて上田市内から郊外に移動し、狙いをつけた小さな集落で『アサヒビール』や『大熱さましノーカツ散』の看板を見つけた。
クスリの看板は最も好きなカテゴリーで、遠足に行く子供みたいだが、見つけた瞬間には心が踊る。それが初見モノだったらな尚更で、今回見つけた看板はまさにそんな1枚だった。
正午を過ぎ、ラーメン屋で腹ごしらえをし、上田を離れ須坂に向かう。
過去の探検でも何度かトレースしたルートだったが、須坂市内では新たに醤油醸造元で初見の看板を撮影することができた。
古い蔵や町並みが残る須坂はじっくりと徒歩で探検をしたい町だが、今回は時間もなく次回にとっておくことにし、長野市内で町名看板を撮影した後、小布施に急いだ。
目的の商店は外見はごふつうの小さな酒屋さんといった感じだった。 店主の男性に話を伺うと、創業時からこの店で販促物として使われていた看板を保存しているということだった。
かつてはよろずやだったようで、食品や日用品を中心にクスリの看板も揃っていた。中でも『花王シャンプー』の看板は垂涎モノ。これまで岐阜県内で展示品を撮影したことはあったが、自然の状態で保存されていたものを見るのは初めてだ。
はちみつや絵具、アサヒ長靴の姿看板など初見モノも多く撮影することができ、本日二度目の心の躍動を覚えたひと時となった。
リフォームされた店は創業時のかつての姿はないが、おそらくこの商店は全国に残る看板商店の中でもトップクラスのパフォーマンスといえると思う。いつまでも残ってほしいと願う。
小布施での稀有な出会いに満足し、上田までの帰路は情報を得ていた地酒の看板が貼られた酒屋を訪ねてみた。
迷路のような小さな集落に右往左往しながらようやく見つけたが、時すでに遅しで、そこには看板が剥がされた痕が年季が入った板壁に無情にも白く残っていた。
収穫と言えば『養狸場』と記された看板。そのまま解釈すると狸の養殖場とも取れるが、かつての日本にそんなものが存在していたのだろうか。
看板をよく見ると狸のイラストも描かれている。滑稽さを通り越して、まさしく狸にばかされたような気がした。
この日最後に出会ったお宝は、ユニークさでは他に類を見ない看板だった。
(2017.1.20記)
※画像上/古い商店が並ぶ長野市善光寺界隈。昭和の雰囲気が濃厚だ。
※画像中/須坂市の町並み風景。さりげなくホーロー看板が貼られているのが哀愁を誘う。
※画像下/上田市郊外の脇道で見つけた廃業した酒屋。こうした建物にはホーロー看板が潜んでいる確率が高いが、残念ながら残っていなかった。