琺瑯看板探検隊が行く

ホーローの旅

レポート349 2016年夏、関西ホーロー紀行 後編

2016.8.19-20
兵庫県豊岡市~朝来市~姫路市~神戸市~尼崎市~大阪府大阪市~藤井寺市~富田林市~奈良県高取町~御所市~大和高田市


探検レポート349

綾部で迎えた朝。青空が見えるもの、梅雨のような蒸し暑い一日が始まった。
まず目指したのが兵庫県豊岡市。JR山陰本線沿いにある看板屋敷は以前から気になっていた物件で、2011年4月に沿線沿いをくまなく探したが、見つけることができず残念な思いで旅を終えた経緯があった。
今回は投稿者の方からいただいた情報を元に看板屋敷の前に立ち、積年の思いを晴らすことができた。
夏草が茂る空き地と畑の先にある存在感がある建物に、びっしりと看板が貼られた様は壮観で、久し振りに心の躍動を覚えた。 言うまでもなく、年々消えていく看板屋敷だが、2016年の今日にまだこうして残っていたことに拍手を送りたい。
豊岡市で踵を返し、姫路に向かって南下する。気が付けば、ぐずついていた天気は入道雲が沸き上がるピーカンになっていた。運転していても汗が止まりらず、エアコンを最強にしてハンドルを握る。
竹田の町に入り、『天空の城』の看板に導かれるまま竹田城に向かう。看板探しから脱線だが、ここまで来てずっと気になっていた城を観ないわけにはいかない。

探検レポート349

JR竹田駅からシャトルバスが出ているようだが、クルマで向かうことにし、旗を振る誘導員の言いなりに竹田城のふもとにある駐車場に着くと、(…ガーン)バスを待つ長蛇の列があった。 こりゃさすがに並ぶ気がしない。
駐車場から見上げる竹田城の石垣ははるか高見で、それでいて手の届くところにあるようにも見える。 (次は、雲海のなかにぽっかりと浮かぶときに来るかぁ~)…とぼんやり思いながら、山を下りることにした。
結局時間を無駄にしただけで終わってしまったが、収穫は帰路に通り抜けた竹田の町。看板は無かったが、レトロな雰囲気が色濃く残る町並みが目に涼やかだった。
竹田の町からさらに南下し、いよいよ今回の旅の最大の目的地である姫路に入った。 平成の大工事が終わった姫路城を眺めながら、町名看板を探す。
前回の探検では事前の調査不足もあり、一枚も見つけることができなかったが、今回はグーグルストリートビューで調べていただけにハズレはない。
8枚の町名看板をカメラに収め、目的を達成することができた。

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探険三日目。古いビジネスホテルで眼覚める。昨夜は遅くまでオリンピック中継を見ていたので、寝不足状態だ。
約束したように、朝から気温がぐんぐんと上がり、すでに30度に届こうとしている。 最終日のスケジュールは、姫路から尼崎→大阪→奈良という関西横断のルートである。
まず向かったのが、神戸市の郊外にある『オリバーとんかつソース』の看板。これまでに淡路島で短冊形を見つけているが、正方形のタイプは初見。私鉄の駅前にクルマを置き、民家が軒を並べる急な坂を登ったところにその看板はあった。
フェンスに貼られた看板が何の目的で貼られたのかは分からない。この近辺の住人しか通らないロケーションに貼られた看板にどんな意図があるのだろう。こればかりは、貼った人にしかわからない。
Tシャツにビーチサンダル、首にカメラを下げた冴えない格好で、汗をかきながら坂を下り、阪神高速で尼崎に向かう。
インターから走行車線に入る直前でタイヤに衝撃。太陽に反射してキラリと光った金属片が目に入った時には除けきれず、タイヤを引っ掛けてしまったようだ。
サービスエリアに入って確認すると、後ろのタイヤの腹に直径2センチほどのえぐれた痕が…。傷は思ったほど深くないので、そのまま走行することにしたが、高速道路でこうしたトラブルは初めてだったので、肝を冷やすことになった。
尼崎市内で町名看板を撮影して大阪市に向かう。何度も訪ねている大阪だが、今回ばかりはうれしい瞬間に顔がほころびそうな期待が盛り上がる。
JR沿いにある『アース』の看板が貼られた民家が、その正体。 線路を挟んだフェンスの向こう側なのでロケーションは悪いが、肉眼でもはっきりと蠅が転がっている絵が見て取れる。
この看板は"丸型アース"と私が勝手に呼んでいる看板で、関西地方にしか残ってない看板なのだ。

探検レポート349

過去にわずかな情報を得て大阪府豊中市や兵庫県加古川市の物件を探しに行ったことがあるが、いずれも空振りに終わっており、今回が初めての遭遇となったわけである。
看板探しを初めて11年が経過したが、初めて見ることができた貴重品だ。うれしさもさることながら、まぁ秘めた胸を焦がした初恋の人との再会とでも言っておこう(笑)。
午後を周り、銀メダルを獲ったオリンピックの男子400メートルリレーのニュースをラジオで繰り返し聴きながら奈良を目指す。
途中の東大阪と富田林で気になっていた町名看板と看板商店を撮影していく。 富田林の商店はすでに閉店していたが、どっしりとした外観に美しい屋根瓦が素晴らしく、そのまま映画のワンシーンに出てきそうな雰囲気があった。
旅の最後を飾ったのは御所と大和高田の看板。 最後に出会った美空ひばりの看板は、くすりやさんの隙間にひっそりとへばりつくように貼られていた。
長い間そこが棲み家だったんだろうか、錆びることなく、色褪せないひばりさんの姿が艶っぽかった。
(2017.12.25記)
※画像上/天空の城・竹田城へ向かうとのどかな田園風景に古びた農家の小屋が。日本の原風景といった風情があった。
※画像中/兵庫県竹田。街道が通るレトロな町並み。昼下がりの風景は光と影。ひんやりとした土壁にもたれてみた。
※画像中/同上
※画像下/平成の大改修が終わった姫路城。真っ白な外観に目がまぶしい。
※宿泊/宿泊/姫路グリーンホテル坂元。素泊まり4200円。姫路城から近いロケーションは良いが、近くに飲食店が少なく、設備も古い。☆☆★★★



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Profile

つちのこプロフィール
つちのこ
岐阜県在住。
歩き旅とB級グルメの食べ歩きが好きな定年オヤジです。 晴耕雨読ならぬ“晴読雨読”生活に突入し、のんびりとした日々を送っています。
2020年には、少年のころからの夢だった、北海道から鹿児島まで日本列島を徒歩で縦断。
旅の様子はブログ『つちのこ更新日記』で発信中です。


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