ホーローの旅
レポート３５４ 春の北関東縦横無尽ホーロー旅 前編
2017.3.24
福島県郡山市～須賀川市～天栄村～栃木県那須塩原市～大田原市～那珂川町～那須烏山市
郡山駅の新幹線ホームに降りると、早春とは思えない生暖かくまとわりつくような空気が全身を包んだ。
巷は春爛漫の桜の季節。そして、憎っき、花粉の季節…。 遡ること２年前に突如として発症した我が身。鼻水タラタラ、喉ガラガラ、目のカユミ…この時期特有の悲惨な状況になることは分かっている。
できることなら外出はしたくないが、春の声を聞いて看板探しの虫が疼きだしたからには、そうはいかない。
目指すは北関東である。特に栃木県と茨城県は、赴任先の仙台からもそんなに遠いわけでもないのになぜか食指が動かず、後回しにしていたエリアである。
今回は休みと費用を投資し、意を決しての３日間である。どんなお宝に出会えるだろうか。
予約をしていたレンタカーを駅前で調達し、国道４号線を須賀川方面に南下開始。何度も走った道なので道草をせずに県境を越えることを考えが、そこは探検隊、脇道が出てくるたびにハンドルを回してしまう。
小さな集落で『やまと生命』と『ヅーシ』のレアな看板を見つけた。ストリートビューでも確認できない盲点の場所。こういうのはありがたい。
幸先が良いスタートになったことで気をよくして、普段の昼食をコンビニのサンドイッチで済ませるところ、白河市にある行列で有名なラーメン店『とら食堂』に寄ることにした。
しかし、この決断が甘かったのか、順番待ちはなんと１時間半に及び、更に宇都宮泊まりということをすっか忘れていたこともあり、結果的に後半は日没との戦いで、かなりの駆け足となってしまった。
県境を越え栃木県に入る。 まずはとらのしっぽさんから情報を頂いた那須塩原市にある、看板商店へ。
『ツバサ石鹸』と『みそしょうゆキッコーナ』の２枚の看板が醤油販売店の店先に貼られていた。『キッコーナ』は名古屋市にあるメーカーのブランドなので、栃木県にあること自体が何とも怪しい。
その辺のいきさつについて店主に確認できなかったことが残念だが、特に『ツバサ石鹸』はレアな看板だけにこうして貼られているだけで貴重だろうと思う。
那須塩原からは大田原市方面にハンドルを握るが、思わぬ田舎道で金鳥ペアを発見したり、積み上げられたビールケースに隠れるように顔を出していた『キリンビール』の看板を見つけることができた。
こうした不意の邂逅ともいえる出会いは素直にうれしい。最近のホーロー探検はストリートビューに頼りっぱなしで、見つけることの面白味も半減していたが、やはり予期せぬ出会いこそが看板探しの醍醐味だと思わずにいられない。
その極というべき、最高の出会いが旅の初日に待っていてくれた。 栃木県を代表するといっても過言ではない看板商店との出会いだ。
見過ごしそうな山間の小さな集落に隠れるように建つ商店には、全部で９枚のレアな看板が無造作に貼られ、まるで時間が止まったような雰囲気を醸していた。
（凄い!!） 思わず口ずさみそうになった。 かつては店の軒先に揺れていただろう醤油の吊り看板、店の左右の入口に対に貼られた『キッコーショウ』と『エスビーカレー』。そして初見の『リスコショー』。
2017年の今日に、これほどの看板商店が残っていたことに驚きを隠せない。 店は開店休業状態で引き戸が閉まっており店内に入れず、店主の話を訊けなかったことが心残りだった。
突然現れた看板商店の余韻を胸に、宇都宮市に入り旅の初日を終えたが、久しぶりのホームランをかっ飛ばしただけに、名物の宇都宮餃子が一段と美味く感じた。
生ビール片手にニヤケた顔でデジカメのビューを再生し、撮った画像を何度も確認した。
頭の中は今日の喜びと、明日の探検の期待で一杯だ。
久しぶりにホーロー看板探しモード一色だった旅の初日は、うれしい一日となった。（つづく）
（2019.2.25記）
※画像上／郡山市から須賀川市に向かう。残雪を抱いた阿武隈の山々が美しい。
※画像中／迷い込んだ田舎道に金鳥ペア看板があった。この風景いつまでの頃だろうか。
※画像下／福島県天栄村にある『清酒廣戸川』を造る松崎酒造店。残念ながらホーロー看板はなかった。
※宿泊／『ホテルセレクトイン宇都宮』素泊まり3780円。駐車場無料はうれしい。宇都宮駅から徒歩１０分ほど離れているが、周辺には飲食店もありコストパフォーマンスは良い。☆☆☆☆★
