ホーローの旅
レポート364 縦横無尽の甲府チャリンコ勝負
2019.4.20-21
山梨県甲府市
以前から温めていた計画を実行に移すことにした。
7年越しの思いを、わが足とペダルに託す…なんとも大げさだが、今回は自転車を利用した甲府で過ごす二日間である。
甲府までのアプローチは中央自動車道[瑞浪天徳バス停]を9時15分出発し、甲府駅前着12時34分着の高速バスに乗車。
折り畳み自転車は輪行袋に詰め、バスのトランクに格納することになる。 あとはのんびりと車窓を眺めながら過ごす。
今回の目的は甲府市内を縦横無尽にペダルをこぎながら、ナショナルがスポンサーになった町名看板を探すこと。前回(2012年10月)の探検では同じ方法で33枚を見つけているが、その後の情報では60枚近くが残っていることが分かっている。
グーグルストリートビューで確認できないものも考えると、まだまだあるに違いない。 狭い路地に潜入し、ブロック塀やフェンス、電柱にまで目を配って、さしずめ宝探しのようにゲームを楽しむ…いやはや久しぶりに血が騒ぐじゃないか…。
▼4月20日
バスは定刻通り甲府駅前に着いた。願ってもない快晴、暑くなりそうだ。
腹ごしらえは車中で済ませたので、駅前ロータリーですぐに自転車を組み立て、ペダルを漕ぎ出す。
初日の今日はJR甲府駅の南側エリアを探検する。看板の場所は地図にプロットしてあるが、情報やビューから漏れた看板を探す手段としては、自分の感を頼りにどうアプローチを取るかにかかってくる。
文字通り“目を皿のようにして”探す。 埋もれた町名看板を探す手段はこれしかない。
最初に見つけたのが、お目当ての町名看板ではなく、老舗の麹専門店に貼られた麹の看板。真っ赤な短冊看板がレトロな建物によく映えていた。
前回、甲府市内を探検した時にはまったく気づかなかったが、町名看板から目を転じると意外にこうした看板も残っているようだ。
中央から青沼エリアにかけては甲府市内でも町の中心になるが、ターゲットの町名看板以外にも『ヤマサ醤油』のレアな青地看板を見つけることができた。
次に青沼から朝気エリアに向かう。朝気から伊勢エリアはJR身延線の内側にあたり、町名看板の生存例が多いエリアである。前回の探検では東は善光寺がある城東エリアまでしか足を伸ばしておらず、ここから伊勢エリアまでは甲府駅からはもっとも遠いエリアとなる。
朝気→湯田→住吉→伊勢エリアへと地図にプロットした看板を順調に撮影していくが、懸念していた通り消失した看板を何枚も数えたり、ビューをくぐり抜けた電柱に貼られた看板との偶然の遭遇もあった。
また、他サイトで拾った身延線の東側に当たる青葉町の看板は番地が分からないので、広大な青葉町地内を闇雲に探すもとうとう見つけることはできなかった。
1時間以上のロスをしたがこうした空振りも宝探しゲームの醍醐味である。
探検初日は伊勢エリアで踵を返し、宿がある甲府駅前まで宝町→丸の内エリアとペダルを漕ぐ。 途中、神社の祭礼に遭遇して行く手を阻まれたり、突然目の前に現れたビンテージ感漂う廃墟が建つ素敵な路地裏を見つけたりした。
路地裏の飲み屋に赤ちょうちんが灯り始めた頃、予約していたビジネスホテルに到着。
その寂れた外観を見て一瞬たじろいだが、場末のホテルに泊まるのもまんざら悪くない。壁紙が剥がれ、染みが浮き出た床を観ながら、通された部屋で一人苦笑するのであった。
といっても、慣れは恐ろしい。適当に入った赤ちょうちんで甲府名物の鳥もつをつついてビールでうがいして部屋に戻ったら、一日中ペダルを漕いだ筋肉痛と心地よい酔いで、すぐさま深い眠りに突入するのであった。
▼4月21日
早朝、ホテルのご主人に見送られて出発。甲府駅前から出る帰りのバスは16時なので、たっぷりと勝負ができる。
甲府駅から北側のエリアが今日の探検ルートであるが、山梨大学から武田神社がある尾形、北新エリアは勾配もあり、人力に頼る自転車探検は骨が折れそうだ。
JR中央線に沿って宝町から飯田町へ向かう。
『飯田二丁目1』はビューでも確認できなかったいわくつきの看板。線路に沿って行ったり来たりして、ようやく見つけたのが保線区内にある事務所のフェンス。盲点のような場所にあった。
塩部エリアは前回の探検でも念入りに調べたエリアであるが、まだまだモレは多く有り、電柱に縛り付けられた折れ曲がった看板や、ツタに覆われた廃商店の入口に貼られた看板を見つけることができた。
塩部からは甲府駅方面に一旦戻り、今は盛りのハナミズキが街路樹として植えられた整備された商店街を抜け、美咲→朝日→武田→北口の順にペダルを漕ぐ。
このエリアは証券会社やハム会社といったナショナルバージョンとは違うスポンサーの看板が残っている。
以前の探検では天神町と朝日四丁目でそれぞれ1枚づつ見つけているが、今回更に7枚を上乗せすることができた。
北口からは山梨大学のキャンパスを抜け大手エリアに向かう。勾配が徐々にきつくなり、汗が吹き出てくる。もうすぐ還暦のおとっつさんには過酷なチャレンジだが、好きでやっているから文句もない。
大手エリアは狭い範囲に4枚の看板が残っていた。武田神社に近いだけあって武田軍の武将の屋敷跡が残り、のんびりと探訪をするには歴史好きには興味深い。
せっかくなので武田神社を参拝し、国家『君が代』の由来となった『さざれ石』の見学もした。高台にある武田神社は遠望もよく、雪に覆われた南アルプスの稜線を望むことができた。
武田神社から南下し、続いて住宅地の中に狭い路地が交錯する尾形、北新エリアを回る。下り坂の路地を加速をつけながら降りていくのは、疲れを忘れることができる自転車ならではの快感だ。
6枚の看板をカメラに収め、そのまま一気にJR中央線を跨いで甲府城跡へ。自転車をデポして石垣の上まで登ってみた。
天守はないが素晴らしい眺めに驚き。私のようなにわか城好きにも堪らない風景で、根っからの城マニアであるカミさんにぜひ見せてやりたい風景だった。
さて、甲府の町名看板探検も終盤である。 最後の勝負は中央三丁目から、城東、青沼エリアをトレースして打ち止めとした。
内径が小さい10年物の折り畳み自転車を駆使した探検であったが、老骨に鞭打って、筋肉痛にもめげず二日間を走り通した。
ホーロー探検には様々なアプローチがあるが、のんびりと歩きながら探す徒歩の旅も良いが、爽やかな風や自然の匂いを感じながらの自転車旅も楽しい。
荒い呼吸に喘ぎ、汗を拭きつつ走った述べ50キロの旅は、しばらく忘れることができない記憶となりそうだ。
(2019.8.12記)
※画像上/10年来の相棒である折り畳み自転車が今回の主役だ。
※画像中/甲府市内で見つけたレトロなアパート。雰囲気がある鉄の扉がなかなか。
※画像中/路地でのんびりと遊ぶネコたち。
※画像中/ツタで覆われた建物に貼られた町名看板。いつまでも残って欲しい風景だ。
※画像下/武田神社で。ホーロー探検の成果を願って参拝をした。
※宿泊/「ビジネスホテル○川」 素泊まり3500円。JR甲府駅駅に至近。寝るだけだったら施設は古くても十分許容範囲。☆☆★★★