琺瑯看板探検隊が行く

ホーローの旅

レポート368 コスモス揺れる濃尾平野を行く

2019.10.30
岐阜県揖斐川町~大野町~岐阜市~羽島市~愛知県稲沢市~愛西市


探検レポート368

職場復帰を二日後に控えた日、前週に続いてホーロー探検に出ることにした。
緊張感からか、目に見えぬストレスは少しづつ増幅しているようで、肩こり、目の疲れから始まり、血圧も上昇してきた。
ストレス解消には睡眠と平常心を保つこと、そして気分転換が一番のクスリ…とくれば、自分とっての気分転換はやっぱり“ホーロー探検”となるわけだ。 泊りの探検にはまだ不安が残るので、今回もリハビリがてら近場の日帰りとする。
自宅からまず向かったのが、岐阜県揖斐川町谷汲。雲一つない快晴である。 東海環状関インターから国道に乗り継ぎ2時間。奥美濃の山々を望む旧名鉄谷汲駅に着いた。ホーロー探検の道草としては気になるスポットである。
2001年の谷汲線の廃止に伴い廃駅になっているが、駅舎とホームはそのまま残っており、モ514(大正15年)とモ755(昭和3年)というレトロな車輛が2両保存されている。これまでに何度もここを訪れているが、年々寂れていく印象はぬぐえない。どうかこの駅舎をいつまでも保存して欲しいと思う。
谷汲駅でナビを設定し、投稿者のKANKANさんから情報をいただいた揖斐川町の山奥にある集落に向かう。
山が狭まり、川幅が谷の様相を示してくると、にわかに小さな集落が現れ、そのどん詰まりによろずやのような店構えが見えた。 目的の地酒の看板は店の真正面の軒先に揺れていた。

探検レポート368

全国を行脚したこれまでの探検で様々なロケーションを見てきたが、山奥にある看板という点では間違いなく五本の指に入るに違いない。
歩いている人はおろか、人の気配もない山奥の小さな商店で揺れるホーロー看板は、いったいどれほどの広告効果があったのだろうか。 今となっては知る由もない。
山奥にある看板をカメラに収め、蛇行する往路をたどって山を下りる。 次に向かったのが大野町にある杉原酒造。ここは数年前に立ち寄っているが、投稿者の『とらのしっぽさん』からの情報では蔵の入口にある建物にずらりと並んだ地酒『千代の花』の看板があるとのこと。
ストリートビューで確認してみると確かに写っていた。現地に行ってみると蔵の前にはモダンなデザインのカフェが建っており、建物の側面には『千代の花』の看板がびっしりと貼られていた。
おそらく蔵の経営?のカフェだと思うが、私が訪ねた2009年にはなかったので、蔵の経営も酒造りだけで収まらずに多角化が進んでいるようだ。
最近オープンしたばかりの『道の駅大野』で昼食を取り、岐阜市内の町名看板を撮影した後、コスモスが咲き乱れる休耕田を見ながら向かったのが羽島市にある廃業した酒蔵、林彰一郎商店。

探検レポート368

国民の日本酒離れが加速し酒蔵の廃業が相次いでいるが、廃墟のまま放置されている姿を目の当たりにすると言葉が出ない。 この蔵には2009年にも訪ねているが、荒廃がさらに進んでいようである。
投稿者のとらのしっぽさんからの情報をもとに蔵の別棟にあるという地酒の看板を探してみるが、鬱蒼とした雑草に阻まれ見つけることができなかった。
クルマに戻って足元を見ると、“ひっつきむし”がびっしりと付き、そのおぞましさに閉口することになった。
さて、ここから先は県境を越え、愛知県稲沢市の町名看板を巡る。 かつての旧祖父江町には多くの町名看板が貼られたようで、毎年のように新たな発見がされている。
結果的に今回は他サイトに掲載された看板の後追い撮影ばかりになってしまったのは残念である。
自力発見を目指して事前にビューで見つけた看板も、現地では空振り消失の憂き目にあったり、ならば…と当たりをつけて小さな集落に突入すると、車幅ギリギリの狭い道で身動きが取れなくなってしまう体たらく。
新規発見のハードルがなかなか高いことを実感するが、やはり自力発見こそがホーロー探検の醍醐味であることには変わりがない。
努力は必ず成果を呼ぶ…という信念のもと、現地発見にこだわるスタイルを継承しつつ、ストリートビュー調査にもこれまで以上に力を入れてみようと思いながら、すっかり暗くなった道を自宅に向かってハンドルを切った。
(2019.12.17記)
※画像上/岐阜県羽島市のいちのえだ田園フラワーフェスタ。毎年10月に休耕田がコスモス一色になる。
※画像中/2001年10月に廃線となった名鉄谷汲線の谷汲駅。2両のレトロな電車が保存されていた。
※画像下/地酒の看板を求めて、揖斐川町の山奥にクルマを走らせる。川の両岸にへばりつくように集落が現れた。



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Profile

つちのこプロフィール
つちのこ
岐阜県在住。
歩き旅とB級グルメの食べ歩きが好きな定年オヤジです。 晴耕雨読ならぬ“晴読雨読”生活に突入し、のんびりとした日々を送っています。
2020年には、少年のころからの夢だった、北海道から鹿児島まで日本列島を徒歩で縦断。
旅の様子はブログ『つちのこ更新日記』で発信中です。


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