琺瑯看板探検隊が行く

ホーローの旅

レポート373 コロナ禍の中馬街道足助へ

2020.3.1
愛知県豊田市


探検レポート373

昨年の3月に訪ねた愛知県豊田市足助町のレポートを、10ヵ月が経過した今頃になって記している体たらくを大いに反省している。
言い訳をすれば、この一年近くコロナ禍に翻弄されながらも、少年の頃からの長年の夢であった日本列島徒歩縦断というチャレンジにうつつをぬかしていた。
このレポートは、3月に予定していた縦断のスタートをコロナの感染拡大によって泣く泣く延期した状況の中で、半ば憂さ晴らしで訪ねたときのものだ。
江戸時代からの旧街道である『中馬街道』が通る町並み保存地区の足助町は、町を上げての雛まつりイベント『中馬のおひなさん』の真っ最中。 期間中に約7万人が訪れるという1999年から始まった町起こしである。
例年なら歴史ある通りは観光客で賑わっているところだが、コロナの影響はこんな山奥の町にまで及んでいるのか、人影はまばらであった。
町の駐車場にクルマを置いて、係員のおじさんに貰った雛まつりのイベント地図を開きながら目抜き通りへ。

探検レポート373

雛人形は、中馬街道が通る約2キロにわたって続く古い町並み沿いの、140軒以上の民家や商店に飾られていた。 大正時代の年代物や土雛、竹雛、そして飾り雛まで多様な雛人形たちが目を楽しませてくれ、いつしか心が和んでいくのを感じた。
いちご大福や五平餅を買い食いしながら歩くのも、子供の頃に返ったようで楽しかった。
ホーロー探検が目的で過去に何度も訪れた足助町だが、訪ねる度に看板の姿が消えているのが分かる。 食料品店の軒先にかかっていた「赤だしみそ」や古い自転車屋にあった「メヤム自転車」の看板もいつの間にか無くなってしまった。
そんな中で、雛飾りに誘われ偶然入った廃業した商店で見つけた、ずらりと並んだ石油看板には圧倒された。 石油や香油の初めて見る戦前の看板たちに目が点になってしまった。
恐るべし、足助町。 まだこうしたレアな看板たちが人知れずに残っていることに驚かずにはいられなかった。
更に、この日の感激はこれにとどまるだけでなく、同じように雛人形を見るために入った古い文房具店で、初見の万年筆やインクの看板と出会うことができた。
何度も訪れている足助町だが、雛まつりイベントが功を奏したのか、新たな発見を見せてくれた貴重な一日となった。

探検レポート373

カメラを片手にのんびりと撮影をしながら目抜き通りを歩き、雛人形とついでに探したホーロー探検に飽きた頃、神社に続く石段を登り切り、町並みが一望できる丘の上に立った。
眼下には、古い民家が肩を寄せ合うようにびっしりと並んでいるのが見えた。
せっかくの好天の日曜だというのに新型コロナウイルスの影響だろうか、町並みを貫く目抜き通りには人影がまばらなのが手に取るように俯瞰できた。
静かな山間にこだまするように、本来なら賑やかなはずのチンドン屋の鳴り物が、遠く、切なく、寂しそうに響いていた。
(2021.1.10記)
※画像上/中山道中津川宿を歩く。古い町に古い看板あり。レトロな肥料屋さんや造り酒屋にお宝が隠れていた。
※画像下/中山道のウォーキングで出会った石仏群。ずっと昔から道行く人々を見守ってきたのだろうか。



2020年探検レポートへ

Profile

つちのこプロフィール
つちのこ
岐阜県在住。
歩き旅とB級グルメの食べ歩きが好きな定年オヤジです。 晴耕雨読ならぬ“晴読雨読”生活に突入し、のんびりとした日々を送っています。
2020年には、少年のころからの夢だった、北海道から鹿児島まで日本列島を徒歩で縦断。
旅の様子はブログ『つちのこ更新日記』で発信中です。


琺瑯看板探検隊が行く
SINCE 2005.3.17