ホーローの旅
レポート387 奥三河へ、新春探検2023
2023.2.1
愛知県名古屋市~豊橋市~新城市~岐阜県恵那市
2023年の新春探検をどこにしようかと悩んでいるうちに、ひと月が経ってしまった。
その間にストリートビューを検索する机上探検を続けてきたが、なかなかヒットしない。
思った以上に、ホーロー看板が姿を消しているのを実感せずにはいられなかった。 ともあれ、まずは一年の最初を飾るホーロー探検に漕ぎ出してみたい。
狙いを定めたのが、愛知県の奥三河。
昨年も足を運んだエリアだが、今回はストビューで見つけたわずかな看板と、以前から気になっていたJR東海道本線沿いの看板屋敷を絡めて一日コースとして計画することにした。
放射冷却で氷点下になった晴天の下、まずは他サイトにあった名古屋市内の町名看板に向かう。
数日前に降った雪がまだ残っている空地の隣に建つ古い一軒家に、『東海通三丁目』の看板があった。
実はこの看板には曰くがあり、町名看板が気になりだした2012年に撮影している。
しかし、撮影したデジカメの記録メディアを誤って消去してしまうというヘマをしてしまい、そのまま再訪することもなく時が過ぎてしまった。
メディアには、他にも今は消失してしまった名古屋市内の町名看板も保存されていたが、すべては時すでに遅し。 返す返すも再訪しなかったことが悔やまれる。
今回、他サイトで生存確認ができたことで、再び出会えたことが嬉しい。
建物はすでに空き家になっているようなので、取り壊される前に撮影できたことは幸運としかいいようがない。
すぐ近くにある『桜台町4丁目』も撮影し、一路、南へ向かう。目指すはJR東海道本線沿いの看板屋敷である。
この屋敷の存在は数年前から知っていたが、訪ねる機会がないままズルズルと時が過ぎてまった。
昨年秋に旧東海道を歩いたとき、すぐ近くを通ったにも関わらず、歩くことに集中するばかりで余裕がなく、ほんの数㎞の寄り道ができずに撮影のチャンスを逃すという後悔があった。
看板屋敷には『菅公』『トーア毛糸』『トヨタ洗濯機』『サクラ日本学生服』という鉄道系の定番が4枚貼られており、おそらく往年にはもっとあったかもしれない看板が貼られた跡が残っていた。
屋敷の前が駐車場になっているが、運よく一台も止まっていなかったことがラッキーだった。 久しぶりの看板屋敷だけに、心が弾んだ。
続いて豊川市内からJR飯田線に沿って新城に向かう。
飯田線沿いは気になるロケーションがいくつもあり、看板ばかりでなく石仏や神社仏閣にもカメラを向けていく。
ストビューでは見えない線路沿いの木造家屋もチェックしていくが、匂うロケーションはたくさんあっても、看板の姿はどこにもなかった。
そのまま三河大野を目指して北上。 途中で、ストビューで見つけた町名看板と防火看板を撮影し、ついでに前回の探検で見つけることができずに空振りしてしまった『鳳来町玖老勢副川』もカメラに収めた。
大野の町に入ると、まるで昭和が戻ってきたような懐かしい空間となった。
大野は鳳来寺山と秋葉神社を結んだ秋葉街道の宿場町で、鳳来寺鉄道(現JR飯田線の一部)の駅も設置されたことから、交通の要衝として繁栄したといわれている。
しかし、令和の今は、当時の賑わいはすっかり影を潜め、ネコさえ横切らない静かに時を刻む町並みがあった。
町の中心部にあるシンボル的存在である鳳来館は1924(大正13)年に大野銀行の本店として大正時代に建設された洋風建築の鉄筋コンクリート造りで、東三河地方の金融の拠点としても栄えた名残として目を引く。
今は、カフェとしても使われているようだ。
大野の町は、宿場町の名残と思われる旅館や商家の建物などがいくつも軒を並べ、歴史の重みがある町歩きを楽しむことができた。
ホーロー看板の姿は一枚もなかったが、奥三河という交通不便な山間に、足を運んだ甲斐があった。
大野を離れ、帰路をどう取るかしばし悩んだが、時間もまだ早いので国道151号線を北上し、岐阜県の恵那経由で帰還することにする。
しかし、愛知県の背骨ともいえる三河山間部を縫っていく国道はあれよあれよと雪道に。
スタットレスで良かったと胸を撫で下ろしながらハンドルを握る。
それでも車窓から看板を探すことは忘れない(笑)。
県境を越えて岐阜県に入った上矢作町で、定点観測を。
しかし、向き合うように二棟並んだ看板商店は、一棟が取り壊され跡形もなくなっていた。
取り壊された屋敷には『忠臣学生服』と『清酒いとう鶴』の看板が貼られていたことを思い出す。
しかし、取り壊しを逃れたもう一棟には『忠臣学生服』がまだ残っていたことが幸いだった。
このエリアには他にも『フレンド編機』もあったが、残念ながら姿を見ることができなかった。
自宅を出て250㎞、さすがに疲れが出てきたのか腰も痛くなってきた。
陽が落ちるまでにはまだ時間があったが、さすがに岩村から山岡の町を寄り道して定点観測する根性はなく、そのままハンドルを握り自宅に向かう。
狙いのホーロー看板は一日走ってわずか数枚という収穫だったが、看板屋敷も撮影できたし、レトロ感溢れる三河大野の町も散策できた。
一年の展望を占う新春探検としては、上出来の一日に仕上がったと思う。
(2023.2.10記)
※画像上/大野宿のシンボル的存在の鳳来館(旧大野銀行本店)
※画像中/JR東海道本線沿いの看板屋敷。定番の鉄道系看板が貼られている
※画像中/大野宿。宿場町の名残と思われる旅館や商家の建物などがいくつも軒を並べる
※画像下/閉店した商店のショーウインドが寂しい。岐阜県上矢作町