琺瑯看板探検隊が行く

ホーローの旅

レポート403 桜吹雪の三重県探検

2024.4.10、14
愛知県清須市~三重県桑名市~朝日町~鈴鹿市~四日市市


探検レポート403

住み慣れた名古屋を離れ、郊外のニュータウンに越して30年が経った。
自宅から長い坂を下り、陶器産業で栄えた古くからの町並みとレンガ煙突が残る路地をのんびりと歩き、神社に向かう。
町を知るために始めたいつもの散歩コースだったが、そこには町の辻々に赤と青地のツートンカラーの色鮮やかな町名看板が貼られていた。
ホーロー探検に夢中になる前の記憶だが、いつの間にかその看板たちも消えてしまった。
もっと早く興味を持っていれば、多くの姿をカメラに収めていたはずである。 思うと残念でならないが、これが絶滅危惧種となった昭和の遺産、ホーロー看板が置かれている現実なのであろう。
看板マニアの先達のT.MさんがHP『悠久の思い出』で、町名看板は他の看板と違って“そこだけのもの”であり、その場所に行ったという思い出の証になる。と記している。
これは私にとってもまったく同感である。私のHPに収録された町名看板の一枚一枚こそが、私の足跡であり、生きた証である。
ホーローの旅を続ける限り、町名看板の姿を追っかけていきたい…そんな思いを胸に、今年の始動は岡山から九州を回る町名看板を探す旅をした。
旅の後半は予期せぬ花粉症に苦しむことになったが、遅咲きの桜はようやく満開。そしてあっという間に散り始めた。
ともあれ、この勢いで三重県に向かう。

探検レポート403

▼4月10日
自宅を出て三重県桑名市を目指した。交通情報を確認すると予定していたルートの名二環は清州西IC~名古屋西ICまで通行止、東名阪は桑名まで断続的に渋滞が発生という状況だった。
集中工事の時期に重なったのは不運だが、嘆いても仕方がない。 とりあえず清州までは高速道を利用することにして、そこから下道で桑名に向かった。
清州では『真珠漬』が貼られた看板屋敷に立ち寄る。かなり以前から存在を知っていた屋敷だが、ようやくスマホに収めることができた。
この屋敷はすぐ前に建つ工場ができるまでは、JR東海道本線の車窓からよく見えた物件だったようだ。
【伊勢に七度紀州に五度】というコピーがユニークである。看板を覆い隠すように庭木が生い茂っているのが残念だった。
清州からは遅々と進まない渋滞に阻まれ、木曽三川を渡り桑名市に入った。
何度も訪れている多度エリアであるが、今回の目的はライオンズクラブのトレードマークが入ったホーロー製の町名看板にある。
看板のスポンサーは昭和34年設立の桑名ライオンズクラブのようだが、地域に根差した奉仕活動の理念をもとに町名看板を設置する活動を行ったのだろうか。
実はこの看板は桑名市一帯にそれこそ星の数くらい貼られたと思われる。現在でもかなり残っているが、スポンサー名や標語等のロゴが入っていないし、何より設置年が新しそうでレトロ感に欠けることもあり、食指がどうにも動かずカメラに収めてこなかった経緯がある。
看板を通じて交流がある、まるかどさんのHP『まるかど日記』では、この看板について、「コンプリートしたくなってしまうけど、うっかり探し始めると収拾がつかなくなるのでやめておく」と記している。

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そんな心配をよそに、私はすでに収拾がつかない世界への一歩を踏み出そうとしている。
遠からず、いずれこの看板も消えていくだろう。確信めいたものが脳裏をよぎる。
コンプリートは難しいかもしれないが、この看板を追っかける酔狂な輩が一人くらいいてもいいだろう。
まぁ10年も経てば、私が記録した看板たちも古の遺産として、少しばかしは光が当たる時が来るかもしれない。
多度エリアからは、事前にストリートビューでマッピングした看板を次々に撮影しながら桑名市中心部に南下していく。
桜は散り始め、風に乗って花弁が舞う。 花粉もいっしょくたに舞っていると思うと花粉症の苦しみが倍加し、この景色を優雅に見ることもできない。
桑名市内でクルマを止めて、自転車作戦に切り替える。息苦しいマスクが面倒でしかたがないが、所狭しと民家が立ち並ぶ路地にペダルをこいだ。
ストビューで確認していたスポンサー付き町名看板の【市場町東】と【開瀬町東】が消失していたのは残念だったが、ライオンズ看板以外にも新規の町名看板をいくつか見つけることができて上々の結果となった。
氷山の一角の数でしかないだろうが、ライオンズ看板については30枚を撮影し、この日の打ち止めとした。

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▼4月14日
飽きもせず中三日で桑名に向かっている。退職した会社のOB会の行事「タケノコ堀り」が朝日町の竹林で開かれることになり、クルマを走らせているのだ。
午前中は慣れない重い鍬をふるい、全身筋肉痛に見舞われながらタケノコを掘った。
初めての体験だったが、午後に目論んでいる看板探しの楽しみを忘れさせてくれるほど楽しい遊びとなった。
昼食後、解散となったその足で朝日町から桑名市を回った。
一昨年に旧東海道を歩いたときに、朝日町から四日市までの街道沿いでライオンズ看板を何度か見かけた記憶があった。
これは次回の楽しみに取っておくことにし、今回は桑名市をもう少し探検したい。
前回に続いて折りたたみ自転車で市内を走る。どうにも諦めきれなかった【市場町東】のスポンサー付き町名看板は、民家の玄関先に隠れていた。
日曜日の午後なので、さすがにインターフォンを押して「看板を撮らせて欲しい」とお願いする勇気もなく、ちらりと見えている看板をそっとスマホに収めた。
この日撮影したライオンズ看板は10枚。ストビューではまだいくつか確認しているが、さすがにタケノコ堀りの疲れが出てきたのか、回り切れずに打ち止めとした。
帰路は集中工事に阻まれた高速道をパスして国道へ。延々と渋滞が続く1号線にうんざりしながらもハンドルを握った。
荷台に積んだタケノコが発する微かな春の香りを嗅ぎつつ、まだ当分は楽しめそうなライオンズ看板との出会いを思いながら帰途に着いた。
(2024.4.15記)

探検レポート403

※画像上/水を貼ったばかりの水田に映る桜。風に吹かれて桜吹雪が舞っていた。三重県桑名市。4月10日
※画像中/田植えを待つ水田の風景。遠く鈴鹿山脈北部や養老山地が見えた。三重県桑名市。4月10日
※画像中/桑名市市場町界隈。クルマが入れないような狭い路地にぎっしりと民家が軒を並べていた。三重県桑名市。4月10日
※画像中/三重県を代表するホーロー看板の真珠漬の巨大な看板が貼られた屋敷。三重県桑名市。4月10日
※画像下/桑名城趾がある九華公園。花弁を散らす名残りの桜が綺麗だった。三重県桑名市。4月14日



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Profile

つちのこプロフィール
つちのこ
岐阜県在住。
歩き旅とB級グルメの食べ歩きが好きな定年オヤジです。 晴耕雨読ならぬ“晴読雨読”生活に突入し、のんびりとした日々を送っています。
2020年には、少年のころからの夢だった、北海道から鹿児島まで日本列島を徒歩で縦断。
旅の様子はブログ『つちのこ更新日記』で発信中です。


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