ホーローの旅
レポート50 東北遠征② お宝の町へ 岩手県編2
2005.8.11
岩手県遠野市~花巻市~紫波町~盛岡市~八幡平市~岩手町~葛巻町~九戸村~軽米町~洋野町
岩手県は遠く、そして広い。走っても走っても、同じような景色が続く。
のどかな田園とたおやかな森…宮沢賢治や石川啄木が愛してやまなかった土地である。私たちにとってはほんの“一瞬の夏”であるが、琺瑯看板を探しての旅はきっと忘れえぬ思い出になるに違いない。
遠野を出て宮守村、紫波町、盛岡市と雄大な岩手山を左に北上を続けていく。青森県は遥か先である。
国道を離れた脇道ではオロC巨人の星バージョンと初めて遭遇し意気が上がった。そして圧巻は岩手県北部の山間の町。国道340号線沿いはまさにお宝街道とも呼べるほどのロケーションである。
醤油、自転車、ミルク、鉋、わた、くすり、学生服などレアもの看板のオンパレードだった。これほどの看板街道は珍しい。末永く残って欲しい街道である。
葛巻町からは九戸村、金田一温泉へと北上するが、驚いたのは、山里で見つけた酒屋。いつものように「写真を撮らせてください」とお願いすると、牛乳瓶の底のようなメガネをかけたいかにも東北人らしい温厚そうなおじさんが、「看板のしゃすん(写真)?そったらことっ、なんの役にたつべ…」なんて言いながら、次々に倉庫から看板を出してきてくれる。
どれも店の軒下に掛かっていたものだが、錆が浮いて廃棄処分寸前のものばかり。これには辟易したが、せっかくのおじさんの好意を無にするわけにはいかず、店の壁面に立てかけて撮影。たしかに錆びて保存が悪いものばかりだったが、よく見るとレアもの揃いだった。
午後から座敷わらしで有名な金田一温泉に移動し丹念に探すが、ほとんど見つからない。町を離れ、ようやく見つけた看板が貼られた民家に向けてシャッターを押していると、玄関から中年のご主人が出てきて「今、撮ったろ?どこ撮ったんだ?」と、明らかに一戦交えようとする剣幕。
「すみませんねぇ、あの看板があまりにも珍しいので、つい記念に写真をと思って…」などと逃げ口上。「わがった、分かった」で事なきを得た(笑)。
東北には温厚な人もいれば、猜疑心が強い人も多い。カメラを向けただけで、家の中から僕らを見ている視線を何度も感じたことがあった。…最も、その都度、“撮り逃げ”を繰り返す探検隊であったが(笑)。
軽米町から大野町に入ったところで陽も暮れかかってきた。県境を越えて青森県八戸市に入った頃にはすっかり暗くなっていた。
県道沿いのちょっとした公園の駐車場にテントを張ったが、水銀灯に集まるクワガタやカブトムシを取りに親子づれが何度も訪れたり、大型トラックは一晩中エンジンをかけて止まっているわで、騒々しい夜となった。
しかし、疲れていたのか、缶ビール2本でふたりともバタンキュー(死語・笑)だった。(つづく)
(2005.8.29記)