ホーローの旅
レポート53 東北遠征⑤ 山形・新潟かけ足編
2005.8.14
山形県真室川町~天童市~上山市~南陽市~新潟県関川村~胎内市
琺瑯の旅も最終日を迎えた。肌にまとわりつく生ぬるい小雨が降るなかテントを撤収し、山を下りる。感慨深いが、秋田県ともこれでお別れだ。
探検隊は山形県をすり抜けて新潟を目指し、村上ICより往路で帰還する予定だが、お盆の真っ最中とあって、渋滞に巻き込まれる懸念がある。
ずっと以前だが、山登りの帰りにそんな目に遭って、へろへろになって帰宅したことを思い出した。
それこそ数珠繋ぎの高速道路の中でトイレにも行けず、苦しまぎれに路肩で用を足したことを思い出す(笑)。
山形県に入って最初のゲットは、真室川町の小さな集落で見つけたよろず屋の看板だった。まだ朝の6時だというのに、店は開いている。ホウキやバケツ、鍋、ちり紙が賑やかに山積みされた店の入口に真っ赤な看板。「資生堂石鹸」と読める。そして壁には履物系の看板がさりげなく下がっている。
誰もいないのを見計らってカメラを向けようとしたそのとき、Tシャツにステテコ姿のお爺ちゃんが、怪訝な顔をして突然現れた。 「そこに掛かっている看板の写真撮らせて欲しいんですが。僕らは看板の写真撮って回っているんで…」不意をつかれても、条件反射のようにいつものせりふがスラスラと出てくる(笑)。
「看板?変わったモン、集めてるんでなんしょ…(以下不明)」などといいながら、撮らせてもらった。
雨は時折激しくなったり、小降りになったりを繰り返し、天童市に入る頃にはすっかり晴れ上がった。天童市は殺風景な町だが、それでも意外に看板棲息率は高そうで地下足袋やトタン板の看板をゲット。
時間があればじっくり探したいが、岐阜県は遠い。先を急ぐしかない。上山市から山形市を経由し、南陽市から新潟市を目指す。
小国や飯豊町も期待していたが、私たちの網には掛かってこない。適当に車を流しても見つけることができないようだ。棲息率が高いエリアはお宝のほうから目に飛び込んでくる。
新潟県に入り、温泉の誘いに心が揺らぐが、ぐっと我慢して先を急ぐ。関川村や黒川村(現・胎内市)の旧街道筋の脇道で自転車やオロC、くすりの看板を見つける。
コンビニおにぎりを頬張りながら、渋滞が始まった国道をノロノロと村上ICに向かう。
もはやのんびりと琺瑯探検をしている余裕もなくなった。岐阜県はたまらなく遠いと、強く感じた5日目だった。
今回の旅は大急ぎで東北を回るスケジュールになった。次回は岩手県南部や青森県、秋田県をじっくり回ってみたいが、東北地方は想像以上に広く、日数はいくらあっても足りないくらいだ。
年々、貴重なお宝たちが消えていく現状を見ていると、急がなくてはならないと思う。 僕ら探検隊を焦らせるほど、東北地方は濃く、魅力的である。(おわり)
(2005.8.29記)