ホーローの旅
レポート54 長野~群馬ひとり旅【前編】中山道沿い探検
2005.8.27
長野県長和町~上田市~東御市~小諸市~群馬県安中市~富岡市
東北遠征で張り切りすぎた反動からか、しばらくのあいだ気が抜けた日々が続いた。
仕事にも読書にも身が入らず、夏バテも手伝って、いざ次の探検となると、計画するのも面倒で腰が重かった。
副隊長のあんもんに電話をすると、彼も夏バテで動けないという。不惑真っ最中のおじさんにとっては、夏の暑さは天敵のようだ。
しかし現金なもので、連日、会社帰りのアルコールの誘いにふらふらとのっているうちに(笑)、琺瑯の虫がむくむくと動きだした(笑)。
アルコールでやる気になるのもおかしなことだが、そこは長年の習慣か、私にとってはガソリンを補給するみたいなものだからしかたがない(笑)。
夏バテが長引いているあんもんは“置いていく”ことにし(笑)、地図を広げて、以前から考えていた群馬県への計画を煮詰め始めた。
まずはアプローチをどうするのか思案した。新潟県から南下するコース、あるいは長野県から入るコースなど、どちらも魅力的だが、今回は単独探検ということもあり、距離が短い長野県コースをとることに決める。
▼8月27日
朝から強い日差しが照りつける中、車に自転車とキャンプ道具一式を積み込み出発。中央道を諏訪ICで下り、和田峠から小諸、そして軽井沢を目指す。
長和町(旧和田村)では旧中山道沿いの集落で何枚かゲット。標高が1000メートルを超える山の中だが、どんなロケーションでもあなどれない。人気(ひとけ)があるところには、お宝の姿があるからだ。
旧丸子町に入ると俄然にぎやかになってきた。予想はしていたが、丸子町は古い家屋や商店もよく残っており、琺瑯棲息率が高いエリアだ。じっくり探せば成果は大きいと思うが、今回は時間的余裕がなく、アタリをつけて探してみる。軽く流しただけでも、飴や自転車、酒、食品などの収穫があった。
反面、軽井沢はまったく探す気にならない。都会の一角をそのまま山の中に持ってきたような町では、人の多さもさることながら、琺瑯看板のレトロなイメージが町の雰囲気に全くリンクせず、違和感はぬぐえない。
その上、群馬県へ向かう国道は渋滞もひどく、歩道でたむろするテニスルックの軽薄学生や、腕を組んで歩いている怪しい中年のオヤジとOL風のカップル、マウンテンバイクでしゃかりきに走る額にバンダナを巻いたおじさんなど…見たくなくても視界に入ってくるから始末が悪い。一刻も早く抜け出すことばかり気にしていた。
コンビニおにぎりを頬張りながら、軽井沢から九十九折の峠道を下り、ようやく群馬県に突入した。旧松井田町は群馬県を扱った琺瑯関連のサイトでは、レアモノの収穫が期待できるエリアのようだ。
しかし、すでに時遅しか。それとも僕の探索能力が低いのか、これといったお宝とは出遭えない。埃っぽく殺風景な道が続くばかりで、ポイントが絞り込めないのだ。
たが、群馬県は裏切らなかった。旧中山道を安中市に入ると、それこそ「お宝ロード」の様相を示してきたではないか。
くすりや学生服、家電、履物、わたなど、琺瑯パレードである。岩手県葛巻町や岐阜県付知街道と比べても遜色がないほどのお宝街道だ。車を何度も止めながら調子に乗って次々とシャッターを押していく。
本来なら許可を貰って撮影をするのが常套だが、誰もいないこといいことに、撮り逃げを繰り返していると、くすりの看板が貼られた蔵の隣にある母屋から妙齢のお嬢さんが出てきた。
注意されると思って一瞬固まってしまったが、彼女はシャッターを押している僕の目的が分からなかったようだ。事情を説明すると、「大変ですね、お暑いでしょう」といいながら、手作りのコーヒーゼリーまでごちそうしてくれた。
これで気をよくして運が尽きたのか、その後はパッタリ(笑)。安中市がホームランなら、期待していた富岡市ではほとんど“完封負け”といった感じだった。
すでに17時を回っていることもあり、市内のスーパーで酒とお惣菜を買い、甘楽町の公園の駐車場で本日の探検を終えた。
テントは暑いので車中ビバークすることにし、車の脇で銀シートを敷いてお惣菜をつまみながらビールを飲んでいると、犬の散歩にきたおじさんが近寄ってきた。
「にいちゃん、ごきげんだね~」 「岐阜県ナンバーか。どこから来たの?」 …ビールを一杯ご馳走したのが失敗だったか、これを皮切りに真っ暗になるまで延々1時間近くも居座られた(笑)。
なかなか快適な駐車場かと思ったが、アベックの車がひっきりなしに出入りする。夜中になり雨が降り出すと、(なんで俺はこんなことしてるんだろう…)なんて考え始め、今度は妙に人恋しくなってしまった。
雨に煙る水銀灯の灯かりが一段暗くなると、ようやく浅い眠りにつくことができた。(つづく)
(2005.9.5記)