琺瑯看板探検隊が行く

ホーローの旅

レポート92 ミステリーの村へ、奈良県天川村探検

2006.5.20
奈良県奈良市~宇陀市~下市町~黒滝村~天川村~大塔村


探検レポート92

内田康夫のミステリーに「天河伝説殺人事件」という作品がある。
1991年に映画化もされたのでご存知の方も多いはず。私は本も読まず映画も観ていないが、登山の帰りにこの村を通るたびにずっと気になっていた。
何しろ、「てんかわ」というロマンチックなようでおどろおどろしい村の名が、「八墓村」を連想するようでおっかなかった(笑)。
それだけに、ひょっとしたら珍しいお宝が息を潜めて待っているのではないだろうか。そう思うといてもたってもいられなくなり、あいにくの雨模様にも関わらず、この奈良県最奥の村、天川を目指して出かけることにした。
アプローチは名阪経由で大宇陀町に入った。昨年の探検で古い町並みをしつこく回ったつもりだったが、「サンエッチ靴クリーム」や「毎日香」などが貼られた雑貨店が運悪く休みで、とりもなおさず、目的の店を真っ先に訪れた。
昭和30年代の匂いが漂ってきそうな店内が、なんともいえず懐かしい雰囲気に溢れている。麦わら帽子や殺虫剤、かとり線香…いいねぇ…。
上市、古市と吉野川沿いに南下し、黒滝村に入った。紀伊半島の脊梁にあたるこの辺りは鬱蒼とした原生林が続き、森のトンネルをくぐるように国道が延びている。時折出てくる小さな集落には必ずといっていいほど酒屋の看板が。日本はつくづく飲んべえ大国だと思う。
長いトンネルを抜けると、そこが天川村だった。信号がある唯一の交差点を挟んで民家と商店が並んでいるが、人の姿はいっさい無い。

探検レポート92

車から下りて傘を片手に探索開始。ねっとりとまとわりつくような雨交じりの風が、髪をすり抜ける。午後2時だというのに薄暗く、街灯が点滅し不気味な雰囲気が漂っている。
白目を剥いた気がふれたオヤジが、建物の影から出刃包丁をかざして飛び出してきそうで、なんだか怖い(そんなワケないか!)。
10年ほど前に登山の帰りに訪れたときは、レトロな商店街があったと思うが、道路は拡張されてしまい今はその面影もない。残念だが、期待していたホーロー看板も見つけることが出来なかった。
気を取り直して、大塔村に向かう。川沿いの県道で廃業した酒屋に遭遇。よく見ると、盃をかたどった酒の看板が下がっていた。広島県の地酒「白牡丹」も軒下に揺れていた。 ここまで来て今日の探検は不発に終わるかと思ったが、運は尽きていなかったようだ。
最後の最後にホーローの神様が微笑んでくれた。 雨が一段と激しくなり、紀伊山地の鬱蒼とした森が霞みはじめた。梅雨はすぐそこまできているのだろうか。
大塔村を抜けるトンネルには「恋風トンネル」というプレートが。天川村の薄気味悪さから一転して、心に甘酸っぱい風が吹いたような気がした。
(2006.6.8記)
※画像上/『清酒両白』を造る西田酒造㈱。奈良県奈良市
※画像下/『恋風トンネル』ネーミングがなかなかロマンチック。でもちょっと恥ずかしい!?



2006年探検レポートへ

Profile

つちのこプロフィール
つちのこ
岐阜県在住。
歩き旅とB級グルメの食べ歩きが好きな定年オヤジです。 晴耕雨読ならぬ“晴読雨読”生活に突入し、のんびりとした日々を送っています。
2020年には、少年のころからの夢だった、北海道から鹿児島まで日本列島を徒歩で縦断。
旅の様子はブログ『つちのこ更新日記』で発信中です。


琺瑯看板探検隊が行く
SINCE 2005.3.17