ホーローの旅
レポート93 雪抱く御嶽山を眺めて、木曽路の旅
2006.5.26
長野県大桑村~上松町~三岳村~王滝村
妻籠宿を抜けて国道に出ると、空気が一段と冷たくなった。
初夏とはいえ、標高700メートルを超える木曽路である。新緑が眩しい山の陰から、ハッとするほど白い、雪をかぶった御嶽山が見える。
自宅から2時間の至近距離にあり、木曽路にはこれまで何度も足を運んだが、その都度、幸運なことに新しいお宝を見つけて帰ってくる。中山道に沿った集落は、それこそ路地の隅々まで探す価値があるエリアなのだ。
今回は木曽路のメインともいうべき宿場町を極力パスして、木曽川の支流の小さな集落や林道の奥まで入った。更に、御嶽山が間近に見える王滝村まで足を運んだ。
上松から木曽川右岸に沿った県道を行き、胃腸薬の「木曾百草丸」で有名な三岳村に入る。
村を貫く王滝川には何百匹もの鯉のぼりが泳いでいた。季節はずれの壮観な眺めなので、思わずカメラに収める。
御嶽山の頂が見えてくる。すでに標高は1000メートルを超えていそうだが、集落は続いている。
三岳村は飛騨から木曾につながる交通の要所だけに、ポツリポツリと出てくる小さな集落といえども見逃せない。それこそ板壁の蔵や納屋のひとつずつを丹念に探していく。
牧
尾ダムから王滝村に入ると、更に冷えてきた。車の窓を閉めきったままのんびりと走る。
この村には4~5年前に登山がてら足繁く通ったが、道路も整備され、ひところの面影はなくなった。
集落の規模は小さいので、役場を中心にぐるりと回る。意に反してホーロー看板はほとんど見つけることができない。 王滝村最奥の集落である滝越に、酒の看板がかかったよろず屋が一軒あることを思い出した。
村の中心から更に30分走って目的の店まで行ったが、すでに廃業し、入口には厚いベニヤ板が打ち付けられ、あったはずの看板は跡形もなく消えていた。
わずか5~6軒しかない集落では商売は成り立たないのであろう。 こうして過疎化は進むのだろうか。
看板探しをしていて、とんでもない山奥に突然、集落が現れて驚くことも多いが、残念なことに、廃村にぶつかるケースも多くなった。
急速に姿を消しつつあるホーロー看板の行く末と、山村特有の明暗が妙にオーバーラップして、やるせない気持ちで滝越集落を後にした。
(2006.6.25記)
※画像上/王滝川で泳ぐ鯉のぼり。雪を戴いた御嶽山とマッチしていた。三岳村で。
※画像下/南木曽町の等覚寺山門に安置されている仁王像。300年前に創建された曹洞宗の古刹で、円空仏三体もある。