琺瑯看板探検隊が行く

ホーローの旅

レポート97 2006年夏、新潟の旅1

2006.6.23
長野県須坂市~中野市~飯山市~野沢温泉村~栄村~新潟県津南町~十日町市~小千谷市


探検レポート97

むせるような草いきれと、カラリとした爽やかな風が頬をなでた。
夏草に埋もれるように建つ傾きかけた茅葺屋根に、夏の光が反射し、陽炎となって揺れている。
野沢温泉から栄村を経由して、ようやく県境を越えた。信州から越後へ、自宅から300キロも離れた土地で、ホーローの旅が始まったのだ。
新潟県に入るまではJR飯山線に沿った山里の集落を巡った。狙いの看板は少なかったが、フーテンの寅さんが昼寝でもしてそうな雰囲気があるバス停や、地鶏が放し飼いにされている農家といった、心を和ませる景色をいくつも見てきた。
最近ではホーロー探検をしながら全国を回るうちに、看板を見つけたいという強い気持ちよりも、いつしか“やさしいの田舎”の風景をできるだけたくさんこの目で見たい、という気持ちに変わってきた。
それこそ、クルマや人が通ることもない田舎の脇道に入ると、小さな背中を丸めて乳母車を押した婆さんや、縁側でのんびりとたばこをくゆらす爺さんたちに出会う。
麦わら帽子や地下足袋、パンや洗剤を並べた板壁のよろず屋には、酒やたばこの看板がかけられ、何事も無かったかのように、静かに朽ちていく時を今日も刻んでいく。

探検レポート97

津南町から十日町、小千谷市と田舎の風景を追っかけながら、看板を探した。年季が入った酒屋で見つけた地酒看板は、残念なことに自販機の陰に隠れていた。
少しでも金を稼ぎたいということで置かれた自販機だから、何も関係がない私たちは口を出す術も無いが、何台も並んだ派手な自販機を見るにつけ、古き良き時代の風景がこうして失われていくことに気をもむのである。
ひとり旅ということもあって、軟弱といわれようが、今日の宿泊はホテル泊にした。六日町のスキー場に建つホテルは、シーズンオフということもあり、激安料金だった。
しかも、ツインルーム+和室の部屋は、ひとり身には広すぎて落ち着かなかった。 宿の温泉に入って、途中のスーパーで買い込んだ酒と肴で一杯やり始めたら、現金なもので鼻唄なんぞ出る始末。
コガネムシが、部屋の灯かりを求めて何度も窓にぶつかっては落ちていく。ひとりぽっちの高原の夜は、静かに、深々と更けていった。(つづく)
(2006.7.23記)
※画像上/フーテンの寅さんが昼寝でもしてそうな雰囲気があるバス停(飯山市)。
※画像下/栄村に入ると茅葺の民家が現れた。



2006年探検レポートへ

Profile

つちのこプロフィール
つちのこ
岐阜県在住。
歩き旅とB級グルメの食べ歩きが好きな定年オヤジです。 晴耕雨読ならぬ“晴読雨読”生活に突入し、のんびりとした日々を送っています。
2020年には、少年のころからの夢だった、北海道から鹿児島まで日本列島を徒歩で縦断。
旅の様子はブログ『つちのこ更新日記』で発信中です。


琺瑯看板探検隊が行く
SINCE 2005.3.17