琺瑯看板探検隊が行く

ホーローの旅

レポート98 2006年夏、新潟の旅2

2006.6.24
新潟県南魚沼市~魚沼市~栃尾市~加茂市~見附市~三条市~長岡市


探検レポート98

朝もやが立ち込める中、スキー場に建つホテルを出発。まずは六日町駅を目指す。
駅前商店街はそれなりの規模だが、お宝の匂いがまったくしない。碁盤の目に整然と並んだ商店街を探すこと45分。ようやく見つけた看板は「セーフ」というくすり一枚だけ。期待していただけにこれは肩透かしだった。
後ろ髪を引かれる思いで、魚沼市守門町(すもん)を目指す。最近の市町村合併の功罪により、旧き良き時代の市や町の名が変わってしまうケースが出ている。越後の名峰・守門岳(1537㍍)にちなんだ、何だかぞくっとする響きがある町名はいつまで残るのだろうか、ちょっとばかし気になってしまう。
しかし、守門までの間に肥料や酒の看板をわずかながらゲットするも、看板探しは相変わらず低調で、カメラを構えることなく、ハンドルを握る時間が長くなってきた。
片側通行が何度も続く新潟中越地震で寸断された国道をすり抜け、栃尾市に入った。
豪雪地帯特有の雁木が張り巡らされた栃尾は、油揚げで有名な町だ。確かに油揚げや豆腐を売る店が軒を連ねている。雁木の奥に引っ込んだ商店を覗き見しながら車を走らせると、うれしいことにそれこそ看板ラッシュになってきた。 思ったとおり、酒や醤油の醸造元にはお宝が貼られていた。

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更に、栃尾市の郊外では、琺瑯探検隊発足以来となるオロナミンCのアタック№1バージョンを発見。何と裏面は巨人の星というマニア垂涎ものだった。
店主のおばさんによれば、譲って欲しいという御仁が後を絶たないようで、もちろん譲る気はまったく無いそうだ(けっこう、けっこう・笑)。
しかし、脚立に乗れば手が届くような無防備な位置に貼られていることもあり、これが見納めになるかもしれないと、写真を撮りまくった。
午後2時を回ると陽射しが一層きつくなった。ハンドルを握る右腕は知らないうちに真っ赤に日焼けしている。白やピンクのタチアオイの可憐な花が風に揺れ、緑が眩しいコシヒカリ(?)の田んぼが、サラサラと波打っている。
田んぼの中の一本道を走り、帯織駅付近にあるという看板屋敷に向かう。車を駅広場に置き、徒歩作戦に切り替える。 「壁からのメッセージ」を主宰する広島ののぶ太郎さん情報では、駅付近に3軒の看板屋敷があるそうだが、2軒は簡単に見つけるも、あと一軒がどうしても見つからず、大汗をかきながら線路脇を歩き出す。
それにしても暑い。ペットボトルの水を浴びるように飲みながら、直もしつこく、錆びたレールに沿ってとことこ歩く。武田鉄矢じゃないけれど… 「♪14の頃の僕はいつも~、冷たいレールに耳を当て~~、レールの響き聞きながら~、遥かな旅路を夢見てた~」(思えば遠くへ来たもんだ 1978年・海援隊) …という、鼻歌を歌いたい心境になりたくても、レールの先にあるはずの看板屋敷は一向に見つからない。

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それどころか線路脇にいる不審者の僕に注意を促すためか、耳をつんざくような「ピィッッッー!!!」という警笛を鳴らして走ってくる特急電車の轟音とともに、目的の看板屋敷は遥か彼方に消えたようだった(笑)。
新潟遠征の二日目は、こうして過ぎていったが、特筆すべき看板商店を見つけたことを報告しておきたい。場所は明かせないが、おそらく新潟県、いや東日本を代表する(大きく出たぞ・笑)看板商店ではないかと思う。
店主の老夫婦によれば、戦後すぐに商売を始めたそうだから、かれこれ60年の歳月が流れている。いかにも正しい村のよろず屋らしく、野菜や豆腐、菓子やパン、洗剤などが乱雑に並んでいる商店だ。看板は全部で11枚。どれもレアもの揃いだ。
特筆すべき最たる理由だが、この商店は周りの風景に見事に溶け込んでいた。看板たちもあたかもそこに貼られているのが当たり前のように、長い余生を送っているような気がした。
私的には、これは正直言って凄いことなのだ。 予期せぬ看板商店との出会いは、僕が何度もホーローの旅に出ることの意味を再確認した貴重なひとコマだった。(つづく) 
(2006.7.30記)
※画像上/タチアオイの大きな花が咲く田園風景を走る。栃尾市街地。
※画像中/油揚げを売る店が並ぶ。酒蔵や醤油蔵も軒を連ねるレトロな町並みだ。
※画像下/JR信越本線沿いの看板屋敷



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Profile

つちのこプロフィール
つちのこ
岐阜県在住。
歩き旅とB級グルメの食べ歩きが好きな定年オヤジです。 晴耕雨読ならぬ“晴読雨読”生活に突入し、のんびりとした日々を送っています。
2020年には、少年のころからの夢だった、北海道から鹿児島まで日本列島を徒歩で縦断。
旅の様子はブログ『つちのこ更新日記』で発信中です。


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