ホーローの旅
レポート99 2006年夏、新潟の旅3
2006.6.25
新潟県柏崎市~上越市~長野県妙高市~信濃町~飯綱町
陽が昇ると同時に、柏崎駅前のホテルを後にする。さすがに酒どころとあって、駅舎には「清酒 越の誉」のでかい看板が立てられている。
“やさしい田舎”探しも視野に入れて辿ってきた今回のホーローの旅だが、最終日の今日はどんな風景とお宝に出会えるだろう、期待を胸にスタートした。
まずは市内の商店街を回る。このところ夢中になって読んでいる司馬遼太郎著『峠』(新潮文庫)によれば、柏崎は幕末の戊辰戦争の時には奥州征伐に向けての官軍の本拠地となったところだ。
後の陸軍大臣・山県有朋が、河井継之助率いる長岡藩をここから攻撃したことで知られ、今では戦火にまみれた土地だったということが嘘のように、ゆっくりと、平和な時を刻んでいる。
収穫もないまま柏崎の市街を抜け、日本海沿いに柿崎に向かう。途中でレトロな自転車屋を見つけて、幸先よいスタートを切ったように思えたが、その後がさっぱりで、大型トラックの往来が激しい早朝の国道8号線をひたすら西進する。
何を隠そう、柿崎は私にとって青春の淡い思い出がある町だ(笑)。ホーロー探検にかこつけて、“青春のカケラ”を探しながら、ちょっとばかしセンチメンタルな気分に浸れるかと思ったが、さにあらず。
20数年前に訪れた頃とあまりにも町が変わってしまい(最も、自分の体型も変わってしまったが・笑)、“カケラ”どころか“チリ”ひとつ落ちていない(笑)。
「♪ちょっと~ 振向いて~みただけの~ 異邦人~~」…そういえばあの頃、久保田早紀の『異邦人』(1980年)が流行っていた。
サビの部分を何度も口ずさみながら、暮れなずむ越後の山に向かい、ぼんやりと柿崎駅に立っていた。うーん、青春だったよなぁ(笑)。
さて、ホーロー探検であるが、柿崎から上越までのルートもさっぱりで、更に上越市内も撃沈。どうやら新潟県は、南部に行くほどお宝の棲息密度が低くなることが間違いないという印象が強くなってきた。
しかし、これを覆してくれたのが、高田の町だった。 江戸時代から残る雁木通りは総距離10キロ以上に及ぶという。
お宝が潜んでいるのは、雁木だろうと勝手に解釈し、とにかく一本一本しつこく見ていく。高田の商店街は意外に規模が大きく、ほとんどの通りに雁木が張り巡らされている。
約2時間の探検で、10枚程度のお宝を見つけることが出来たが、時間をかければ、またまだ可能性はありそうだった。
高田で気をよくして、県境を越えた。
糸魚川~信濃大町にしかり、これまでの撃沈の探検を思うと、長野県北部はまったく期待していなかったが、信越本線の牟礼駅前で看板屋敷を発見。
ほのぼのとした昭和の風景が、目に爽やかだった。
(2006.8.5記)
※画像上/日曜日の午前だというのに、人が歩いていない換算とした高田の商店街。雁木通りは総距離10キロにも及ぶ。
※画像下/JR牟礼駅前の看板屋敷(2021年現在、ほとんどの看板が剥がされてしまった)
※宿泊/ホテルニューグリーン柏崎 素泊まり シングル4410円。柏崎駅前にあり、駐車場も無料。コンビニや飲食店も近くに多い。☆☆☆☆☆